ビジネスシーンで、
- 「斟酌(しんしゃく)」
- 「忖度(そんたく)」
という言葉を耳にすることがあります。
「斟酌」「忖度」はどちらも、推し量ることを意味しているという共通点があります。
しかし本来の意味は、少し違ったものになります。
そこで今回は、
- 「斟酌」と「忖度」の違い
- 「斟酌」と「忖度」の英語表現や類語、言い換え
- 「斟酌」「忖度」「配慮」「迎合」「慮る」「忌憚」「えこひいき」「ごますり」の使い分け
などについて、例文を交えてわかりやすく解説していきます。
ちなみに今回の「斟酌」「忖度」のように、使い方の紛らわしい言葉は、ほかにもたくさんあります。
こちらの記事で特集していますので、使い分けができるかどうか、ぜひ挑戦してみてくださいね。
知識を深めよう!
「斟酌」「忖度」の違いは?英語の意味や言い換えも
「斟酌」は「しんしゃく」と読み、相手の事情や心情をくみ取り手加減するという意味になります。
斟酌の例文
今回のテストは採点に斟酌を加えることになりました
このように使います。
つまり「斟酌」は、相手の心情や背景を推し量り対処するといった時に使います。
一方、「忖度」は「そんたく」と読み、他人の気持ちを推し量るという意味になります。
忖度の例文
彼は上司に忖度するばかりで、部下の面倒見は非常に悪い
このように使います。
つまり「忖度」は、相手の気持ちを推し量るという場合のみに使われます。
ですので、「斟酌」と「忖度」の違いは、行動を伴うかどうかということになります。
「斟酌」を言い換える場合は、
- 色々な要素を含め、よく考えるといった意味の「考慮」
- あれこれと考え合わせるといった意味の「勘案」
などになります。
「忖度」を言い換える場合は、
- ある事柄や情報に基づいて、推し量って考えることといった意味の「推測」
- 自分で勝手に推測することといった意味の「憶測」
などになります。
英語にする場合、「斟酌」は「考慮」「考察」といった意味の、「consideration」を使って、
- in consideration of
- take somesing into consideration
といった表現になります。
また、「てかげん」「値引き」といった意味の、「allowance」を使った、
- make an allowance for
といった表現でも使われています。
「忖度」の場合は、「推測する」といった意味の、
- 「speculate」
- 「surmise 」
や、「行間を読む」といった意味の、
- 「read between the lines」
のように訳されます。
「配慮」「迎合」「慮る」「忌憚」「えこひいき」「ごますり」の意味は?英語や言い換えもまとめてみた
次に、斟酌や忖度に似た意味を持つ、「配慮」「迎合」「慮る」「忌憚」「えこひいき」「ごますり」も併せてチェックしていきましょう。
知識の幅が広がりますよ。
配慮の意味、英語表現、類語
「配慮」は「はいりょ」と読み、思いやりをもって気を遣うことという意味になります。
言い換える場合や英語にする場合は、
- 手抜かりが無いように注意することといった意味の「気配り」
- あれこれと気を配ることといった意味の「心遣い」
- 注視する、顧慮するといった意味の「regard」
などになります。
迎合の意味、英語表現、類語
「迎合」は「げいごう」と読み、自分の気持ちを曲げてでも、相手が気に入るよう調子や意見を合わせるという意味になります。
言い換える場合や英語にする場合は、
- 他人にへつらい自分の利益を図るといった意味の「胡麻をする」
- 他人に気に入られるような態度をとるといった意味の「媚びる」
- おべっかを使う、おもねるといった意味の「flatter」
などになります。
慮るの意味、英語表現、類語
「慮る」は「おもんばかる」と読み、周囲の状況などをよくよく考える、思いめぐらすという意味になります。
思いめぐらせる対象が、
- 人や人の気持ち
- 状況や境遇
のどちらにも使われます。
言い換える場合、
- 人に思いを巡らせる時は、気持ちを察して同情するといった意味の「心中を察する」
- 状態や境遇に思いを巡らせる時は、考える際ある物事も考えに含めるといった意味の「視野に入れる」
などになり、英語にする場合は、考察する、よく考えるといった意味の「consider」
などになります。
忌憚の意味、英語表現、類語
「忌憚」は「きたん」と読み、遠慮すること、差し控えることといった意味になります。
一般的には、
- 「忌憚のない」
- 「忌憚なく」
- 「忌憚なき」
などのように、否定表現と共に使います。
「忌憚のない」を言い換える場合や英語にする場合は、
- ありのまま隠さない様子といった意味の「率直」
- 相手に気を使ったり遠慮したりしないといった意味の「気兼ねなく」
- 率直な、隠し立てをしないといった意味の「frank」
などになります。
えこひいきの意味、英語表現、類語
「えこひいき」は漢字で「依怙贔屓」と書き、自分の気に入ったものだけ褒めたり応援したりすることという意味になります。
言い換える場合や英語にする場合は、
- 自分が気に入った相手だけに味方することいった意味の「依怙偏執」
- 対立している物の一方の見方をするといった意味の「肩を持つ」
- 不公平、特別に好むことといった意味の「partiality」
などになります。
ごますりの意味、英語表現、類語
「ごますり」は漢字で「胡麻擂り」と書き、へつらって自分の利益を図ること、人に取り入ることという意味になります。
ちなみに、「へつらう」とは、人の気に入るように、媚びたりお世辞を言ったりすることです。
ごますりを言い換える場合や英語にする場合は、
- 相手の機嫌を取る為心にもないお世辞を言うといった意味の「おべっか」
- 人の気に入るようにふるまうといった意味の「おもねる」
- お世辞を言う、おだててさせるといった意味の「flatter」
などになります。
「斟酌」「忖度」「配慮」「迎合」「慮る」「忌憚」「えこひいき」「ごますり」の使い分けは?
例えば、会社の会議で次のような状況を想像してみてください。
それぞれの状況を表す言葉に注目すれば、使い分けができるようになりますよ。
【例題】こんな状況なら…何を使う?
- 「今日は重要な会議だが、身内に不幸のあったAさんには早退してもらった」
- 「Bさんはいつも部長の意見ばかり気にしている」
- 「Cさんは、否定的な意見ばかりにならないよう、違う意見も提案している」
- 「Dさんは、会議前に言っていた意見と違い、多数派の意見に賛成している」
- 「Eさんの案は採用されなかったので、会議後そっとしておいた」
- 「F部長は会議前に、気兼ねなく意見を述べて下さいと言っていた」
- 「決まった部署の意見ばかり採用するG課長は信用できない」
- 「H次長はいつも部長の機嫌を取って仕事を貰っています」
このような状況を表す時に、次の言葉を使います。
【例題の答え】
- 「身内に不幸があったAさんに斟酌して早退してもらった」
- 「Bさんはいつも部長に忖度している」
- 「Cさんは、否定的な意見ばかりにならないよう配慮している」
- 「Dさんは、多数派の意見に迎合している」
- 「Eさんを慮ってそっとしておいた」
- 「F部長は忌憚なく意見を述べて下さいといった」
- 「えこひいきするG課長は信用できない」
- 「H次長はいつも部長にごまをすって仕事を貰っている」
と、このような使い方をします。
さいごに
以上、「斟酌」「忖度」の違いなどについて解説してきました。
最近では国会でも、「忖度」を「斟酌」の意味で使っている場面をよく見かけます。
それだけ間違えやすい言葉だということですね。
- 斟酌→行動を伴う
- 忖度→行動を伴わない
と覚えておけば、わかりやすいですね。
議員先生のように、おかしな使い方にならないよう、あなたは気をつけていただけるとうれしいです。