「身につける」の「つける」を漢字にする場合、
- 「着ける」
- 「付ける」
の、どちらが正しいでしょうか?
読み方はどちらも同じですが、意味は全く異なります。
ひらがな表記の「身につける」と「身に着ける」「身に付ける」。
意味や使い分けを知っておくと、役に立ちますよ。
そこで今回は、身に「つける」の漢字について、わかりやすく解説していきます。
身に「つける」漢字ではどう書く?ひらがな表記が正しいの?
身に「つける」の漢字表記は、
- 身に「着ける」
- 身に「付ける」
です。
それぞれ意味が違いますので、詳しく見ていきましょう。
身に「着ける」は、
- 「衣服を身に着ける」
- 「時計を身に着ける」
のように、主に、見える物を体につけるといった時に用います。
一方、身に「付ける」は、
- 「英語の発音を身に付ける」
- 「早起きの習慣を身に付ける」
のように、主に、物ではない知識や技術、習慣などを自分のものにするといった時に用います。
ただし、文言によっては「付ける」「着ける」両方とも使うことが出来る場合もあります。
あなたが使い方に迷うようならば、ひらがな表記にしましょう。
身に「つける」「付ける」「着ける」の違いと使い分けは?
「身につける」には、
- 着たり、はいたりする
- 所持する、体につけて持つ
- 知識などを覚える
といった意味があります。
①の場合は、洋服やアクセサリーを身につけて使うというニュアンスになります。
「身につける」の例文①
- 「お気に入りの服を身につけて出かける」
- 「今日彼はピアスを身につけていた」
このように使われます。
②の場合は、大切なものを肌身離さず体につけて持ち歩くというニュアンスになります。
「身につける」の例文②
- 「貴重品は常に身につけていてください」
- 「彼女は試合中お守りを身につけていた」
このように使われます。
③の場合は、知識や技術、習慣などを自分のものとして定着させるというニュアンスになります。
「身につける」の例文③
- 「短時間で技術を身につけるのは難しい」
- 「水泳教室で正しいフォームを身につけた」
このように使われます。
ここで「身に付ける」とした場合、「付ける」には、
- 付加する
- くっつける
- 離れないようにする
- 痕跡を残す
といった意味があり、
- 密着度が高い
- 容易に取り除くのが難しい
のようなニュアンスで使われます。
ですので、「身に付ける」とした場合は③のように、知識や技術、習慣などのように一体化して定着化するようなことを表す時に用いられます。
次に、「身に着ける」とした場合、「着ける」には
- 着用する
- 達する
- 体のある部分を触れさせる
- ある場所に位置させる
といった意味があり、「付ける」よりも
- 密着度が低い
- 一時的な接触
のようなニュアンスで使われます。
ですので、「身に着ける」とした場合は①や②のように、衣類やアクセサリーのような、身に纏い、着脱が簡単にできるといったことを表す時に用います。
ひらがなの、身に「つける」とした場合は、「着ける」「付ける」どちらの意味としても扱えます。
迷ったときは、「身につける」とひらがなで表現した方がいいかもしれませんね。
身に「つける」の言い換えや英語表現は?
身に「付ける」とした場合の言い換えは、
- 学問、技芸などを習って覚えるという意味の「習得する」
- 物事の意味を十分理解して自分のものにするという意味の「会得する」
などになります。
英語にする場合も、
- 「取得する」という意味の「acquire」を使った、「to acquire」
- 「使いこなす」「きわめる」といった意味の「master」を使った、「to master」
などになります。
身に「着ける」とした場合の言い換えは、衣類や小物などを身につけるという意味の、「着る」「着用する」になります。
英語にする場合も、
- 「着る」「はく」というニュアンスの、「put on」
- 「着ている」「はいている」というニュアンスの、「wear」
などになります。
「知識」「教養」「スキル」「技術」「服」「宝石」はどの「身につける」?
一般的には、以下のように使い分けます。
- 「知識」:「知識を身に付ける」
- 「教養」:「教養を身に付ける」
- 「スキル」:「スキルを身に付ける」
- 「技術」:「技術を身に付ける」
- 「服」:「服を身に着ける」
- 「宝石」:「宝石を身に着ける」
ただし、2014年の文化審議会国語分科会において、
”「知識を身につける」の場合、本来は「知識を付着する」という意味で「付」を当てるが、「知識」を「着る(身に纏う)」という比喩的表現からとらえ、「着」を当てることも出来る”
という見解を示しています。
ですので、「知識」の場合は、「身に着ける」「身に付ける」の、どちらでも間違いはないといえます。
誰にでも分かりやすくするのならば、「知識を身につける」と、ひらがな表記にしても良いでしょう。
さいごに
以上、身に「つける」の漢字について解説してきました。
「付ける」と「着ける」の表記の違いは、
- 密着度が高いか低いか
- 目に見えるものだけか、見えないものも含まれるか
になります。
ただし、多くの辞書には、「身につける」という「ひらがな」表記で記載されていて、区別がはっきりしていないものも多くあります。
新聞の表記でも意見が分かれているので、不安な場合は、「身につける」のように「ひらがな」表記にしてくださいね。