詩歌には、様々な形態があります。
中でも特に有名なのが、
- 五・七・五の十七音で成り立つ「俳句」
- 五・七・五・七・七の三十一音で成り立つ「短歌」
- 俳句と同じ形式でも季語を使わないものは「川柳」
- 文字数(音数)のルールがない普通の「詩」
これらの種類があるため、「覚えきれない」「違いが分からない」と迷っていることでしょう。
そこで今回は、
- 「短歌」
- 「俳句」
- 「川柳」
- 「詩」
について、それぞれのルールや歴史、共通点や違う点を、わかりやすくご紹介していきます。
ぜひ参考にしてくださいね。
参考記事
「短歌」とは?英語では何て言う?
「短歌」とは、五・七・五・七・七の五句に別れた三十一音で成り立つ、日本の詩の形式の一つです。
1300年前の7世紀〜8世紀頃には最古の歌集である「万葉集」が出来上がっていました。
その後も「古今和歌集」や「百人一首」などの多くの歌集が作られていることから、古くから日本人に親しまれている詩の形と言えます。
短歌は元々「和歌」と呼ばれ、貴族階級の嗜みとして詠まれることがほとんどでした。
明治時代に国家としてのアイデンティティを確立するため、天皇・皇族がお作りになる御歌や歌会を取り扱う御歌所が宮内省に設けられます。
さらに正岡子規などの有名な歌人達によって、和歌革新運動が起こり、現在の短歌へ繋がってきています。
誤解されがちですが、短歌には実は「季語を必ず入れる」というルールはありません。
季節を中心に詠む俳句と違って、短歌は自分の気持ちや感情を揺さぶられたことを中心に詠むものだからです。
短歌は英語だと
- 「tanka(a tanka)」
- 「a Japanese poem of thirty-one syllables(三十一の音節の日本の詩)」
と翻訳されます。
日本ならではのものなので、英訳としても「tanka」を用いることができるんですね。
「俳句」とは?英語では何て言う?
「俳句」とは、季節を表す言葉である季語を含めた五・七・五の三句十七音で成り立つ定型詩の一つです。
俳句は連歌(れんが:和歌のうちの五・七・五の上の句と、七・七の下の句を別々の人が作る作り方)の上の句だけを独立して観賞するようになったことから、今の形が生まれたとされています。
江戸時代には「俳諧(はいかい)」と呼ばれていました。
滑稽さや面白さを追求する言葉遊びとして「俳諧連歌」が盛んに作られるようになり、その後上の句(発句)だけで独立して観賞するようになりました。
「奥の細道」などで知られる松尾芭蕉がその芸術性を高めていったことで、庶民の間に広く俳諧の文化が流行していきました。
その後、正岡子規がこの古くからある俳諧の形を新しく生まれ変わらせます。
自然の美を、あるがままに写し出そうとしたのが、現在の俳句の形へ繋がってきています。
短歌以上に限られた字数と「季語を入れる」というルールの中で、作者が心揺さぶられた情景を詠むのが、俳句の特徴です。
海外でも
- 「Haiku」
- 「Haiku poem」
と呼ばれて親しまれており、英語で詠まれた「Haiku」もあるそうですよ。
「川柳」とは?英語では何て言う?
「川柳」とは、俳句と同じく五・七・五の三句十七音で成り立つ定型詩の一つです。
俳句は季語を入れて文語体(書き言葉)で綴られますが、川柳は季語を入れずに口語体(話し言葉)で綴られることが多いのが特徴です。
川柳の起源は俳句と同じ俳諧連歌にあります。
- 俳句が上の句が独立して出来上がったもの
- 川柳は下の句をお題として用意しておいて、そこに洒落や気の利いた上の句を付ける「前句付け(付け句)」から発展したもの
と、発展の仕方に違いがあります。
この付け句を評価する点者(選者)の中で、柄井川柳という人が評価したものは、特に人気を博していきました。
そこで彼の名前に由来して、「川柳」と呼ばれるようになったと言われています。
これが川柳の由来なんですね。
また、
- 俳句は自然や季節に関する情景描写が主なテーマになる
- 川柳は社会風刺や時事的なこと、人の生活にちなんだものがテーマになる
と、扱うテーマにも違いがあります。
これには理由があります。
俳諧連歌として、言葉遊びに使われていた頃から、
- 川柳が付け句の自由な題材やユーモアを受け継ぐ
- 俳句は現代でいう時候の挨拶のような要素を含む発句の決まりなどを受け継ぐ
といった、発展の歴史に違いがあるのが、テーマが違う理由になります。
俳句と川柳は、詩の形こそ一緒ですが、対極的な位置にあると言えますね。
短歌や俳句と同じく、川柳も英語では「Senryu」と呼ばれます。
「詩」とは?英語では何て言う?
「詩」とは、自然や人事などから受けた感動を、ある一定のリズムを持つ言語形式で表した文体のことです。
短歌も俳句も川柳も、日本独自の形式を持つ詩の一つであり、歌の歌詞やラップ詞なども詩の一種です。
何かを論理的に説明することよりも、文章のリズムや感動を呼び起こすような言葉選びなどが重視されます。
韻律(aiueoの母音の一定の配列の仕方や音数を示す形式のこと)を用いて綴られることが多いですね。
詩の歴史は非常に古く、紀元前三千年紀のシュメール(メソポタミア)の「ギルガメシュ叙事詩」が現存する中でも最古の詩であるとされています。
- 決まった韻律がある定型詩
- 韻律の制限がない普通の文章の形式で書かれた散文詩(散文=韻律の制限がない普通の文章のこと)
など、一口に「詩」と言っても、その種類は多岐に渡ります。
英語では
- 「poem」
- 「poetry」
などと訳されます。
- 「poem」は個々の作品である詩そのものを指す言葉
- 「poetry」は表現形式としての詩全体を指す言葉
として使われます。
詩(英語)の例文
- I wrote this poem.→私がこの詩を書いた。
- I’m studying poetry.→私は詩を勉強している。
「短歌」「俳句」「川柳」「詩」の違いは?
「短歌」「俳句」「川柳」「詩」のそれぞれの成り立ちなどをご紹介したところで、改めて「短歌」「俳句」「川柳」「詩」の違いについて比べてみましょう。
「短歌」「俳句」「川柳」「詩」の違いまとめ
- 短歌→五・七・五・七・七の五句三十一音で成り立つ、日本の定型詩の一つ。
- 代表的なものは百人一首や古今和歌集など。
- 俳句→季語を含めた五・七・五の三句十七音で成り立つ、日本の定型詩の一つ。
- 代表的なものは松尾芭蕉の奥の細道など。
- 季節や自然を題材にした情緒溢れるものが多い。
- 川柳→五・七・五の三句十七音で成り立つ定型詩の一つ。
- 俳句と違い季語は含まない。
- 俳句と比べると社会風刺や時事的な要素などを盛り込んだユーモアの溢れるものが多い。
- 詩→自然や人事などから受けた感動を、ある一定のリズムを持つ言語形式で表した文体のこと。
- 短歌・俳句・川柳の他、歌の歌詞やラップ詞も詩の一種と言える。
「短歌」「俳句」「川柳」「詩」の共通点は?
「短歌」「俳句」「川柳」「詩」には、ある共通点があることに気付きましたか?
どの詩の形式も言葉のリズム感を大事にしているということです。
ある一定のリズムや、韻律を用いて綴られる文章のことを指して「詩」と呼びます。
「詩」という大きな括りの中に「短歌」「俳句」「川柳」という分野がある、と考えると分かりやすいでしょう。
「詩」の中でも、
形式では、
- 五・七・五・七・七の五句三十一音の形式で綴られるのが「短歌」
- 五・七・五の三句十七音の形式で綴られるのが「俳句」と「川柳」
内容では、
- 季語を含み、季節や自然を題材にして綴られるものが「俳句」
- 季語は使わず、社会風刺や時事的な要素を盛り込んだものが「川柳」
です。
さいごに
日本独自の「詩」の中で似たような形式を持つ「短歌」「俳句」「川柳」です。
よく見て比較してみると、様々な違いがありましたね。
伊藤園の新俳句大賞やサラリーマン川柳など、一般の人でも応募できるものもあります。
よければそちらも参考にしてみてくださいね。