「折敷」「お盆」って同じもの?
旅館や料亭で食事をすると、似たような道具を見かけることがあります。
なかでも間違いやすいものに、「折敷」「お盆」「お膳」「三宝」があります。
普段混同して使っているかもしれませんが、どれも明確な違いがあります。
NHKの美の壺でも折敷が特集されたので、俄然注目が集まっています。
今回は、それぞれの違いを分かりやすく解説していきます。
「折敷」とは?読み方や英語は?見た目の特徴、使い方など
「折敷」は「おしき」と読みます。
食器をのせる食台の一種で、神事などのお供え物や懐石料理などでよく使われています。
一般家庭ではあまりなじみがありませんが、
「料亭や旅館などで食事をするときに、食器をのせているお盆やトレーに似た木製の板」
と聞くと、思い当たる人も多いのではないでしょうか。
もともとは、柏などの葉を敷いて食器代わりに使っていたものが由来とされています。
英語で
「wooden tray」
と訳されるように、杉や檜などを使った木製で、木材の風合いをそのまま活かした物や、漆を塗って仕上げたものなどがあります。
一般的には四角(方形)で、その周囲に低い縁をつけたものになりますが、円形や半月型などもあり、特に決まった形はありません。
さまざまな場面で使用される「折敷」ですが、用途によって、のせるものや使いかたが違ってきます。
折敷の用途1:懐石料理の場合
料理の内容や、出される順番に決まりがある茶懐石料理では、一番最初の料理を提供する際に使われます。
ちなみに内容は、飯・汁・向付(なますや刺身など)の3品、配置は手前左手に飯・右手に汁・奥に向付と決められています。
折敷の用途2:神社・神棚の場合
神社や神棚で使う場合は、お供え物を置く神具として使われます。
お供えされるものとしては主に、米・酒・塩・水になります。
折敷の用途3:普段の食卓の場合
最近では家庭の食卓でも「折敷」を使うことが増えてきました。
サイズやデザインも様々で、ランチョンマットのように敷いたり、器に見立て直接食べ物を置くなど、幅広い使いかたで食卓を演出しています。
「お盆」とは?英語は?見た目の特徴、使い方など
「お盆」は比較的置いている家庭も多く、ごく身近なものと言えます。
意味(定義)としては
- 飲食物を乗せて運ぶ、縁が浅く平たい器
になります。
「盆」という字は、元々、平たい物全般を指す言葉でした。
しかし食器などを指して言うことが多くなったので、「器」の事を指すようになりました。
なので、「盆地」の「盆」は平たい地形を表す意味になります。
「お盆」は英語で
「tray」
になります。
学食や食べ放題のお店などにおいてある、料理をのせていく「トレイ」のことですね。
丸や四角・木製やプラスチック製など、様々なデザインのものがあり、基本的に料理を食卓へ運ぶときに使います。
他にも特別な使い方をする、「広蓋(ひろぶた)」「切手盆」があります。
「広蓋(家紋付き)」
- 縁のある漆塗りの大きな盆。結納など正式な場面で使われる。
「切手盆」
- 冠婚葬祭などで使われる黒塗りの小さなお盆。
金封やご祝儀、お布施などを送るときや渡すときに使われる。
「お膳」とは?英語は?見た目の特徴、使い方など
「お膳」とは
- 料理をのせて人に供する台。多くは脚のあるもの。
になります。
よく見かけるものとしては、 旅館での食事の際に、一人前の食事をのせている高さのある台が「お膳」になります。
見た目は、お盆に足を付けたような形をしていて、英語訳も
「four-legged tray for festive food」
となります。
かつて、座卓やテーブルが普及していない時代、畳や床の上で食事をする際には必須で、どこの家庭にもありました。
次第に日常の食事で使用されることは少なくなり、現在では旅館や祝いの席などで使われるだけになっています。
お膳にも、いろいろ種類があって、主なものは以下の通りです。
お膳の種類
- 蝶足膳:一番足が高く、祝い事や正月様として使う。
- 宗和善:客用として特別な日に使う。
- 猫足膳・木具膳:それぞれ猫の足に似た物と、2舞の板を足にしたもので、日ごろ家族や 使用人が使う。
- 胡桃膳:割った胡桃の殻を足にしたもので、もっとも身分の低い使用人が使う。
このように多くの種類があり、使用目的や使う人によってそれぞれ異なる形をしています。
「三宝(三方)」とは?読み方や英語は?見た目の特徴、使い方など
「三宝」は「さんぼう」と読み、
- 神さまや仏さま、身分の高い人への供物をのせる、白木で作った四角の台
になります。
英語では
「a small wooden stand(on which an offering placed)」
となります。
「供え物をのせる小さな木製の台」と、そのままの訳ですね。
「折敷」の下に胴(台)がついている形で、胴の三方向には宝珠などをかたどった穴が開いています。
神前に飾るときは、穴の開いていない側を神前に向けて置き、米・酒・旬の食物などを供えます。
現在は
- お正月の鏡餅
- ひな祭りの菱餅や白酒
- 十五夜の月見団子
など、季節の行事で使用することが多くなっています。
「折敷」「お盆」「お膳」「三宝」の違いや見分け方は?
「折敷」「お盆」「お膳」「三宝」の見分け方の一つに、それぞれの用途の違いがあります。
「折敷」「お盆」「お膳」「三宝」の用途の違い
- 「折敷」は「食事の際食器・料理をのせるもの」
- 「お盆」は「食器・料理などを運ぶためのもの」
- 「お膳」は「のせられた料理を、そのまま食べられるもの」
- 「三宝」は「お供え物をのせるもの」
となります。
学校の給食で例えるなら、
- 給食をのせているトレイが「折敷」
- 給食を配るために使うものが「お盆」
- 給食を食べているときの自分の机が「お膳」
というイメージで考えると分かりやすいかもしれません。
ただ、一番わかりやすいのが見た目の違いです。
まず大きく二つに分けます。
- 平たい板状の物が「折敷」「お盆」
- 支えがついていて立体的なものが「お膳」「三宝」
になります。
更に、平たい板状の物の内
- 縁の浅めのものが「折敷」
- 縁の深めのものが「お盆」
支えがついていている物の内
- 支えが脚状になっているものが「お膳」
- 支えが穴の開いた台状になっているものが「三宝」
になります。
さいごに
以上、「折敷」「お盆」「お膳」「三宝」の違いを解説してきました。
具体的な使いかたがイメージできると、より身近なものに感じられますね。
最近では、「折敷」をランチョンマットのように敷いたコーディネートが人気になるなど、和食器が見直されてきています。
この機会に今一度見直して、自分なりの楽しみ方を見つけてもいいかもしれません。