春になると、天気予報などで、
- 「今日は花冷えの日でした」
- 「明日は花曇りの一日になるでしょう」
と言った言葉をよく聞きますが、それぞれどのような日なのでしょう。
一見、似たような言葉なので、ニュアンスの違いがわかりにくいですよね。
そこで今回は、「花冷え」「花曇り」の意味や違いについて解説していきます。
ちなみに今回のように、使い方の紛らわしい言葉は、ほかにもたくさんあります。
こちらの記事で特集していますので、使い分けができるかどうか、ぜひ挑戦してみてくださいね。
知識を深めよう!
「花冷え」とは?意味や英語、時期、俳句や挨拶文での使い方は?
「花冷え」とは、桜が咲くころの、一時的な冷え込みのことを言います。
この場合の「花」は、桜を指し、お花見シーズンに、急に冬に戻ったような寒い日を表すような時に使います。
時期で言うと、桜が咲き始めてから葉桜になり始める、「3月下旬頃~4月中旬頃」で、俳句では春の季語になります。
- 「花冷えや しきりに松へ 来る雀」『野村喜舟』
- 「花冷えや 誰も帰らぬ 軒灯す」『星野竹翠』
などの句のように、ただ寒いという意味合いだけでなく、桜の見ごろの時期ということを重ね合わせ、艶やかで風情のある寒さという語感を残します。
また、「花冷え」は、
- 「花冷えの候」
- 「花冷えの頃」
- 「花冷えの折」
などのように、手紙やはがきの時候の挨拶でも使われ、「春になりましたが、まだ寒くなる日も時々ありますね」という意味になります。
拝啓や謹啓などに続く書き出しとしては、
- 「花冷えの候、いかがお過ごしでしょうか」
- 「花冷えの候、皆様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます」
また結びの際では、
- 「花冷えの折、くれぐれもご自愛くださいませ」
- 「花冷えの頃となりましたが、どうぞ皆さまお元気にお過ごしくださいませ」
などのように用います。
いずれの場合も、相手を気遣うといった、心遣いの言葉になります。
英語の表現としては、
- 「chilly spring weather(寒い春の天気)」
- 「cold in cherry blossoms season(桜の時期の寒い日)」
などがあります。
どれも「花冷え」の意味として使えますが、
「a return of cold weather during the cherry blossoms season(桜の時期に寒さが戻ること) 」
という表現が、ニュアンス的に近いかもしれません。
「花曇り」とは?意味や英語、時期、俳句や挨拶文での使い方は?
「花曇り」とは、桜の咲くころの、薄くぼんやりと曇った空模様のことを言います。
「曇り」となっていますが、今にも雨が降りそうな、厚い雲で覆われているような天気では使いません。
一般的に、「鱗雲(うろこぐも)」や「筋雲(すじぐも)」と呼ばれる雲がかかった状態で、うっすらと白っぽいベールがかかった様な、やや明るめの曇り空を表す時に使います。
曇り空でも気温はそれほど低くならず、のどかな春の陽気になるのが特徴になります。
使う時期は、桜が咲く時期の、3月下旬頃~4月中旬頃で、俳句では「花冷え」と同じ春の季語になります。
有名な句としては、
「降るとまで 人には見せて 花曇り」『井上井月』
というものがあります。
「桜の咲く時期、雨が降りそうな空模様で、降ると思わせながら降らないことが多い」という、「花曇り」の様子を上手くあらわした句と言われています。
「花曇り」は、俳句の季語や天気の様子を表す以外に、
- 「花曇りの昨今ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか」
- 「花曇りの季節、肌寒い日が続きますが、お身体にはご留意ください」
などのように、時候の挨拶でも使われます。
一年のうちでも、桜の咲く限られた時期でしか使えない挨拶になります。
また英語では、「かすんだ」「もやのかかった」という意味の、「hazy」を使って、
- 「hazy weather in supuring」
という表現になります。
「花冷え」「花曇り」の違いは?
「花冷え」「花曇り」は、ともに春の季語になり、桜が咲き始める「3月下旬頃~4月中旬頃」の時期に使う言葉になります。
ただし、
- 「花冷え」は、桜が咲くころの、一時的な冷え込み
- 「花曇り」は、桜の咲くころの、薄くぼんやりと曇った空模様
のことを言います。
つまり、「花曇り」は、薄い雲がかかった状態であるのに対し、「花冷え」は、急に冬に戻ったような寒い日であって、雲がある必要はないという違いがあります。
また、「花曇り」の日は、曇り空でも気温はそれほど低くならず、のどかな春の陽気であるという違いもあります。
さいごに
以上、「花冷え」「花曇り」の意味や違いについて解説してきました。
どちらも、桜の花が好きな日本人ならではの感性から生まれた言葉でしたね。
挨拶文としても、春の一時期しか使えない言葉なので、一言添えて風情を出してみてもいいかもしれません。