辞書や書物を見ていると
- 「ヴァイオリン」
- 「バイオリン」
のように、違う表記のものを見かけます。
人名も、
- 「デヴィッド・ボウイ」
- 「デビッド・ボウイ」
と、これも表記している媒体によって、異なるものがあります。
実際にはどちらが正しい表記なのでしょう?
違いや使い方がわかると、これからは迷わず使い分けできますよね。
そこで今回は、「ヴ」「ブ」の違いについて、わかりやすく解説していきます。
ちなみに今回の「ゔ」「ぶ」のように、使い方の紛らわしい言葉は、ほかにもたくさんあります。
こちらの記事で特集していますので、使い分けができるかどうか、ぜひ挑戦してみてくださいね。
知識を深めよう!
「ヴ」「ブ」の違いは?読み方や発音はどう違う?使い方を例文で解説
「ヴ」は、「v」の発音を原音のように表記する為、明治時代に福沢諭吉が考案したものなんです。
元々日本語の仮名には無かったもので、外来語を仮名表記するときに、発音の違いを意識して表記したものになります。
簡単に言うと、本当の発音に近づける為にそれらしく作った仮名です。
読み方とローマ字表記は
- 「ヴァ(va)」
- 「ヴィ(vi)」
- 「ヴ(vu)」
- 「ヴェ(ve)」
- 「ヴォ(vo)」
となります。
一般的に言われている発音の仕方は、
- 前歯で下唇を軽く嚙み
- 歯と歯の間から息を漏らすように「ぶー」と強く息を吹き付ける
といった感じになります。
中学生の時、英語の先生が必死に教えていたことを思い出しますよね。
一方、「ブ」は「b」の発音の仮名表記で、読み方とローマ字表記は
- 「バ(ba)」
- 「ビ(bi)」
- 「ブ(bu)」
- 「ベ(be)」
- 「ボ(bo)」
となります。
ただし、日本語の、ひょっとこのように口をとがらせるようにして発音する「ブ」と違い、「b」の場合の発音の仕方は
- 唇を一文字に閉じて両端を少し引く
- 口の真ん中から勢いよく空気を吐く
のようになります。
ちなみに、「ヴ(v)」と「ブ(b)」の明確な違いは、
- 「ヴ(v)」:振動音、息の続く限り継続して出せる
- 「ブ(b)」:破裂音、瞬しか発音できない
となります。
これを表記してみると、
- 「ヴ(v)」 → 「ヴ~」
- 「ブ(b)」 → 「ブッ」
といったニュアンスと言えます。
「ヴ」「ブ」の使い分けは?例文で解説
「ヴ」は基本的に
- violin(ヴァイオリン)
- drive(ドライヴ)
- love(ラヴ)
のように、英語表記の「v」を片仮名表記にする時に使われます。
一方「ブ」の方は
- bed(ベッド)
- crab(クラブ)
- liberty(リバティー)
のように、英語表記の「b」を片仮名表記にする時に使われます。
ただし、1991年の国語審議会が発表した「外来語の表記」では、
「原音に近い表記にする場合は、「v」音を「ヴ」で表現しても良い」
のような曖昧な表現となっています。
このことから、「ヴ」と「ブ」に、厳密な使い分け方は無いということになります。
最近では、「バ」「ビ」「ブ」「べ」「ボ」表記の方が主流になっています。
ただし
- 最初から決まっている固有名詞(ヴェルディ川崎、エヴァンゲリオンなど)
- 長く使われていて馴染んでいる名詞(ルイヴィトン、作曲家のラヴェル、ヴィヴァルディなど)
のようなものには「ヴ」が使われます。
また、
- best(最高の) ↔ vest(服のベスト)
- berry(果実のベリー) ↔ very(非常に、とても)
のように、同じような発音で意味の違う言葉を分ける際に用いたりします。
「ヴ」の表記がなくなるって本当?世界史や国名ではどっちが正しい?
2019年に施行された「在外公館名称位置給与法」の改正法によって、在外公館の名称から、「ヴ」の表記がなくなったそうです。
- 「ヴァ、ヴィ、ヴ、ヴェ、ヴォ」 → 「バ、ビ、ブ、べ、ボ」
- 「ティ」「テュ」 → 「チ」「チュ」
などのように、国名を変更する法改正は、2003年に施行されています。
これは、流通している辞書など9冊の資料を参照したところ、「ヴ」を使用していたのは1冊だったため、「ヴを使わない表記の方が今の国民になじみがある」と判断したからだそうです。
この時、
- 「セントクリストファー・ネーヴィス」
- 「カーボヴェルデ」
の2ヵ国だけは、まだ「ヴ」の表現が多かったため、2019年まで同表記が残りました。
ですので、現在政府としての国の呼び名からは「ヴ」の表記は無くなったと言えます。
ただし、これはあくまで、在外公館の名称の変更になるので、
- 民間での地図表記
- 歴史上での国名表記
などを制限するものではありません。
そこで、一般的に使う場合は、「ヴ」と「ブ」どちらが正しいという決まりはないと言えます。
世界史のテストで、ヴとブの表記で、不正解になったと、よく耳にします。
この場合、教科書の表記をそのまま覚えるようにしましょう。
考えるよりも、教科書通りに覚えるほうが安全です。
ただ、先程も言ったように、
- ヴ→ブに書き直す ⇒ 安全
- ブ→ヴに書き直す ⇒ 危険
と思っておきましょう!
「ヴ」は「あいうえお順」だとどこ?
ほとんどの辞書では、「う」の並びになります。
「ゔ」は「う」に濁点がつくので、順番は「う」の後「え」の前になります。
「ヴ」から始まる言葉と「ヴ」で終わる言葉!面白いもの5つ
「ヴ」で始まる言葉、「ヴ」で終わる言葉を調べていると、
- ヴァン
- ヴィヴィ
- ヴェルディ
- ヴォルタ
- モーヴィ
という言葉が出てきました。
実はこれらは全て、マスコットキャラクターの名称になります。
しかも、全てJリーグのマスコットなんです!
- ヴァンくん:ヴァンフォーレ甲府
- ヴィヴィくん:V・ファーレン長崎
- ヴェルディ君:東京ヴェルディ
- ヴォルタくん:徳島ヴォルテス
- モーヴィ:ヴィッセル神戸
サッカーに関する言葉や、チーム名が、イタリア語やフランス語など、「v」音のつく言葉が多い国の単語が、ネーミングの基になっているからかもしれませんね。
さいごに
以上、「ヴ」「ブ」の違いについて解説してきました。
結論としては、「ヴ」「ブ」の厳密な使い分けは無く、どちらを使っても可ということでした。
あなたも、正誤は特に気にせず、分かりやすく、見慣れた表現を心がけて使うようにしてくださいね。