会社での会議中や友人との会話の中で、意見がぶつかったことはありませんか?
その場で解決できれば良いですが、お互いにこうだと決めた意見を覆したり、譲歩したりするのはなかなか難しいですよね。
時には自分の意見に対して
- 「その考え方は偏見だ」
- 「そういう先入観を持つのは良くない」
と批判されてしまう……なんてこともあるかもしれません。
一人で決断を下すわけにはいかない場面もあって、意見の擦り合わせに苦労することは多いでしょう。
そもそも、どういった考え方のことを「独断」「偏見」「固定観念」「先入観」「ステレオタイプ」と呼ぶのでしょうか?
今回は人の意見や考え方を示す言葉、「独断」「偏見」「固定観念」「先入観」「ステレオタイプ」の違いについて詳しくお伝えします。
「独断」の意味と使い方の例
「独断」とは、自分一人(単独)で物事を決定することを指します。
中でも人に相談したり深く吟味したりせず、公平を欠いた判断を指すことが多いため、良い意味で用いられることは少ないです。
「独」という漢字は「相手がいない、自分だけ」という意味を持ちます。
その自分一人だけ、単「独」の判「断」のことを指すから「独断」となるわけです。
例文
- 営業先へのお土産を独断で選ぶ。
- 彼は独断だけで突っ走る癖があるので注意した方が良い。
- 部長の独断で、明日の会議はリモートで行うことが決定した。
「偏見」の意味と使い方の例
「偏見」とは片寄ったものの見方や考え方、公平を欠いた意見のことを指します。
中でも根拠が十分ではないにも関わらず、特定の共通点を持つ集団や個人に対して抱く、信念や感情を元にして取られる態度や意見のことを指します。
こちらも一般的に悪い意味で用いられることが多いです。
「偏」の漢字が「本筋や中心からずれている、片寄っている」という意味を持ち、その片寄った見解のことを指すから「偏見」と書くんですね。
個人が持つ偏見に対して矛盾を付く証拠があっても、それを否定し感情的になりやすいのが特徴の一つとして挙げられます。
例文
- 外国人は皆日本語が通じないという偏見を抱くのは良くない。
- 偏見にとらわれず、その人自身を見ることが大切だ。
「固定観念」の意味と使い方の例
「固定観念」とは、他者の意見や状況によって変化することなく、その人の中で凝り固まって、思考や行動を規定するような考えのことを指します。
まず「観念」というのが物事について抱く考えや意識のことを指し、それが一つに固定されているから「固定観念」と書くわけです。
例えば「カレーといえば?」という問いに対して、
- 一般的なカレーライス
- ドライカレー
- グリーンカレー
など、様々な種類のカレーが挙げられますよね。
にも関わらず、「茶色くてドロっとしていて、肉とじゃがいもと人参と玉ねぎが入っている辛いものがカレーだ」とだけ考えてしまう(=一つの観念に固定されている)のが「固定観念」です。
また、これを固定「概念」と勘違いされる方もいますが、固定概念という言葉は誤りなので注意してくださいね。
例文
- 女性は家で家事を行い、男性が外に出て働くべきだという固定観念はもう古い。
- 固定観念を打破した商品の発売が決まった。
「先入観」の意味と使い方の例
「先入観」とは、最初に知ったことに基づいて作られた観念や見解のことを指します。
中でも、その観念や見解によって自由な思考が妨げられる時に使われます。
先ほど挙げたカレーの例で言いますね。
「カレーは茶色くてドロッとしていて肉とじゃがいもと人参と玉ねぎが入っている辛い食べ物」というイメージが最初に出来上がった場合、ドライカレーやグリーンカレーはなかなか思い浮かばなくなりますよね。
これがカレーに対する「先入観」ということになります。
「先」に「入」った「観」念だから「先入観」と覚えると分かりやすいかと思います。
この最初に出来上がったイメージが固定化され、その人の思考にしっかりとこびり付いてしまうと「固定観念」になります。
例文
- 彼の先入観を覆すのは難しい。
- 先入観にとらわれない斬新な発想をしたい。
「ステレオタイプ」の意味と使い方の例
「ステレオタイプ」とは、多くの人に浸透している先入観や思い込み、固定観念などのことを指します。
特にある共通点を持つ人々や物に対して付与される、多くの人が抱く単純化されたイメージのことを「ステレオタイプ」と言います。
例えば
- 「スカートは女性が履くものだ」
- 「カレーは辛いものだ」
といった辺りでしょうか。
最近はジェンダーフリーのファッションが提唱されたり、フルーツを使った甘めのカレーなどのレシピもあったりします。
しかし上記のイメージを抱き続けている人はまだまだ多いですよね。
また、近しい間柄の人達と
- 「A型の人は真面目で几帳面」
- 「自己中心的でマイペースな人は絶対にB型だ」
といったような、血液型にまつわる話をしたことはありませんか?
性格は十人十色であるにも関わらず、「この人はこの血液型だからこういう性格だ」と決めつけてしまうのも、ステレオタイプの一つです。
余談ですがこの血液型にまつわる性格の話題は日本特有の迷信で、科学的に立証された例も無く、欧米諸国ではこういった話題は上がりません。
例文
- ステレオタイプの型にはまった考え方では、新しいアイデアは生まれない。
- このステレオタイプを覆すアイデアを募集します。
「独断」「偏見」「固定観念」「先入観」「ステレオタイプ」の違いは?使い分けと簡単な覚え方は?
最後に、「独断」「偏見」「固定観念」「先入観」「ステレオタイプ」の意味の違いについて簡単にまとめてみましょう。
言葉の違いまとめ
- 独断→ 人に相談したり深く吟味したりせず、自分一人だけで判断を下すこと。
- 偏見→ 片寄ったものの見方や考え方、公平を欠いた意見や考え方。
- 固定観念→ その人の中で凝り固まっていて、他者の意見や状況で変化しにくい考え方。
- 先入観→ 最初に入ってきた知識などに基づいて作られた考え方。
- ステレオタイプ→ 多くの人に浸透している先入観や固定観念、偏見のこと。
- 「独断」はその場限りで下される考え方や意見、行動に対して使われることが多いです。
- 最初に入ってきた知識などに基づいて作られた考え方が「先入観」
- その考え方が凝り固まってしまうと「固定観念」になります。
- 「ステレオタイプ」はそうして生まれた先入観や固定観念が、多くの人の中(社会)に浸透することで出来上がります。
- 「偏見」は先入観や固定観念に、さらに個人的な感情や信念が絡むことで生まれた意見を指します。
また、「偏見」はネガティブで否定的なものを指すことが多いのに対して、「ステレオタイプ」はあくまで社会に定着している思想のことを指すので、中には好意的なものも含まれます。
マイナスイメージの「ステレオタイプ」があることで「偏見」を助長することもあるので、全く違う意味とも言い切れませんが、注意してくださいね。
「「独断」「偏見」「固定観念」「先入観」「ステレオタイプ」の違い」のさいごに
根拠が十分ではなくても、事実と多少違う可能性があっても、一度染み付いてしまった考え方を覆すのは難しいです。
「固定観念」や「偏見」にとらわれず、柔軟な発想ができるように意識することが「ステレオタイプ」である社会になると良いですね。