「ずるい」ことをしたり、「卑怯」なことをした人を指すときに、「姑息なことをする人」という表現を使ったことがあるかもしれませんね。
実は、これは間違った表現なんです。
本来「姑息」とは、
- 「一時しのぎ」
- 「その場しのぎ」
という意味であって、「ずるい」や「卑怯」といった意味は含まれていません。
ではなぜ、間違った使い方がされるようになったのでしょうか?
今回は、「姑息」の正しい意味や「ずるい」「卑怯」との違いなどについて、わかりやすく解説していきます。
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「姑息」の意味は?間違い例と正しい使い方を例文で解説
「姑息」の本来の意味は、一時の間に合わせにすること。また、そのさま。となります。
簡単に言えば、
- その場しのぎ
- 一時しのぎ
と言うことになり、物事を根本的に解決するのでなく、とりあえずその場をしのぐようなときに使用する言葉なんです。
例えば、よく見る使い方で
「姑息」の誤用例
「彼は仕事の失敗を他人のせいにする姑息な人だ」
という文章があります。
この場合の「姑息」は、失敗を他人のせいにする、「ずるい」「卑怯」な人、といったニュアンスで使われています。
ですが、本来の意味から言うと、この使い方は、間違いということになります。
では、
「姑息」の例文
「彼は仕事で失敗しても、原因や対策を立てようとしない姑息な人だ」
といった文章はどうでしょう。
原因や対策を立てようとしない事は、「ずるい」い事でも「卑怯」な事でもありません。
この場合の「姑息」は、失敗しても何もせず、「その場をしのごうとする」ような人、というニュアンスで使われています。
本来の意味からすると、このような使い方が、正しい使い方となります。
「姑息」の語源は?英語では何ていう?言い換えは?
「姑息」は、「姑」と「息」という二つの漢字で構成されています。
「姑」には「しゅうとめ」という意味のほかに、「しばらく」「とりあえず」といった意味があります。
「息」には、「休息」という言葉にも使われているように、「やすむ」といった意味があります。
「しばらく休む」「とりあえずやすむ」と言うところから、「一時しのぎ」「その場しのぎ」といった意味になった事が「姑息」の語源になります。
英語にする場合は、「間に合わせの」「当座しのぎの」といった意味の
- 「makeshift」
「間に合わせ」「穴埋め」といった意味の
- 「stopgap」
「その場を繕う」といった意味の
- 「temporizing」
などになります。
言い換える場合は、「解決策がなくその場を乗り越える」といった意味の、
- 「当座逃れ」
- 「間に合わせ」
などで表現できます。
また熟語で言い換える場合は、「一時的である」というニュアンスの
- 「臨時」
- 「暫定」
などになります。
「姑息」と「ずるい」「卑怯」との違いは?
「姑息」の本来の意味は、
- その場しのぎ
- 一時しのぎ
ということでした。
一方、同じ意味と思われている「ずるい」「卑怯」の意味は、それぞれ
- 「ずるい」:自分の利益を得るために要領よく振る舞うこと
- 「卑怯」 :勇気がなく物事に正面から取り組もうとしないこと
となります。
例えば問題が起きたとき、以下のように使い分けることができます。
「姑息」「ずるい」「卑怯」の使い分け
・基本的に何もせず、うやむやにしてやり過ごそうとすること → 「姑息」
・他よりも自分が得をするように持っていこうとすること → 「ずるい」
・自分では解決できないので、人のせいにしたり押し付けようとすること → 「卑怯」
という違いがあります。
うまく使い分けてくださいね。
さいごに
以上、「姑息とは?「ずるい」「卑怯」は間違い?について解説してきました。
ちなみに、
- 「姑息」を本来の意味の「一時しのぎ」として使っている人は15%
- 「卑劣」「ずるい」といった意味で使っている人が70.9%
だそうです。
ここまでの使われ方なら、”「ずるい」という意味が正しい”と変化するかもしれませんね。
例えば、興奮状態を表す時に使う「鳥肌が立つ」のように、誤用で使われていたものが一般的になるパターンです。
一部では辞書にも載るようになってきています。
将来的には、「姑息」も「ずるい」「卑怯」という意味が加わるかもしれません。
ただ、分かって使うのと、分かっていないのとでは、全く違います。
あなたにおいては、正しい意味が分かった上で使い分けしていただけると、私も嬉しいです。