老舗のお店の名前で
- 「ゐ」
- 「ゑ」
という字を使っているのを見かけますね。
これは、それぞれ「い」「え」と読むそうですが、それぞれの違いや使い分けはどの様になっているのでしょう?
厳密には「い」「え」と違うのでしょうか?
今回は、「ゐ」「ゑ」の読み方や発音の違いなどを、わかりやすく解説していきます。
かな遣いについての参考記事
「ゐ」「ゑ」の読み方は?カタカナはどう書く?
「ゐ」・「ゑ」の読み方は、「い」・「え」となります。
ただし、「い」・「え」は五十音図のア行の仮名になるのに対し、「ゐ」・「ゑ」はワ行の仮名になります。
由来となる漢字も
- 「い」 → 「以」
- 「ゐ」 → 「為」
- 「え」 → 「衣」
- 「ゑ」 → 「恵」
となり、読み方は同じでも別の仮名ということになります。
カタカナ表記は、「ヰ」・「ヱ」となります。
これも同じく読み方は、「イ」・「エ」ですが、平仮名と同じように、由来となった漢字は
- 「イ」 → 「伊」
- 「ヰ」 → 「井」
- 「エ」 → 「江」
- 「ヱ」 → 「恵」
となり、平仮名と同様、別の仮名ということになります。
では、なぜ「ゐ」・「ゑ」はあまり見かけないのでしょう?
実は、「ゐ」・「ゑ」は、歴史的仮名遣い(旧仮名遣い)と言い、今私たちが使っている、現代仮名遣いでは基本的に使われません。
現在では、省略されることが多い仮名になります。
ただし、歴史的仮名遣いを使うことが禁止されているわけではありません。
普段の文章などでは見かけませんが、固有名詞や人名などで使われることもあります。
「ゐ」「ゑ」の発音は?いつまで使われていた?
現在、「ゐ」・「ゑ」の発音は、「i(い)」・「e(え)」になりますが、元々は
- 「ゐ」 → 「wi(うぃ)」
- 「ゑ」 → 「we(うぇ)」
と発音していました。
仮名文字が出来た奈良時代には、
- 「い」 → 「i」
- 「ゐ」 → 「wi」
- 「え」 → 「e」
- 「ゑ」 → 「we」
と発音され、別の仮名として区別されていたのです。
しかし、時代が経つにつれ、次第に簡素化が進み、
- 「wi」 → 「i」
- 「we」 → 「e」
へと変化していき、江戸時代の終り頃には、ほぼ発音の違いがなくなりました。
「ゐ」「ゑ」はなぜ使われなくなった?
江戸後期になると、発音はほぼ、「ゐ(い)」・「ゑ(え)」に変っていました。
ただし、「音韻が変化する前の文献に基づく仮名遣いへの回帰」という考え方(つまり昔の仮名遣いに戻そうという考え方)が主張されたのです。
そういった経緯で、発音は「i」・「e」ですが、「ゐ」・「ゑ」の表記はそのまま残りました。
明治時代に入っても、古文献の仮名遣いが『小学教科書』に採用されたことで、「ゐ」・「ゑ」は、一般的にも用いられるようになりました。
しかし、昭和21年に表音式を基本とした、現代仮名遣いが公布され、現代の発音を反映した仮名遣いが採用されました。
そのため、歴史的仮名遣いである「ゐ」・「ゑ」は、全て、「い」・「え」に書き換えられ、以降一般的には使われなくなりました。
現代では「ゐ」「ゑ」はどのように使われている?
「ゐ」・「ゑ」は歴史的仮名遣いになるので、現代表記では基本的には使いません。
ただし、使用を禁止されているわけではないので、次のように使われる場合があります。
- ・戸籍名に使われている場合
- ・商店などの屋号
- ・あえて使っている場合
例えば、
- 「ウヰスキー」
- 「ヱビスビール」
- 「よゐこ(お笑いタレント)」
- 「ヱヴァンゲリヲン」
- 「ヱスビー食品」
など、いずれも固有名詞になります。
さいごに
以上、「ゐ」「ゑ」の読み方や発音の違いなどを解説してきました。
現在は現代仮名遣いが使われているので、普段は「ゐ」や「ゑ」を使うことはありません。
ただ、使うことは禁じられてはいないので、インパクトを与える店名などを付ける時に、用いてみてもいいかもしれませんね。