日本には五・七・五の十七音で成り立つ「俳句」という詩の形があります。
限られた字数で心に残る風景や出来事を表現し、同時に言葉のリズムや語感を楽しめるのが俳句です。
文章力や表現力のトレーニングにも繋がるため、学校の国語の授業に取り入れられることも多いですね。
実際にあなたも、俳句を作る宿題が出されたことでしょう。
そんなあなたに、今回は「秋」を連想させる俳句をいくつかご紹介しながら、俳句の作り方やコツなどをお教え致します。
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秋を連想させる俳句!有名なもの二つ
まず最初に代表的なものとして、教科書にも載るほど有名な俳人(俳句を詠む詩人のこと)の俳句を二つご紹介します。
・名月や 池をめぐりて 夜もすがら(松尾芭蕉)
(訳:名月が出ているなぁ。池を巡って風景を楽しんでいるうちに、夜も更けてしまった。)
秋といえば、中秋の名月とも呼ばれる十五夜のお月見。
「名月」だけで秋の季語になるほど、十五夜の美しい満月は昔から愛され、秋の俳句や短歌のテーマとして多く取り上げられてきました。
「夜もすがら」は漢字だと「終夜(しゅうや・よすがら)」と書き、一晩中という意味の言葉です。
池という単語も入っていることから、池の水面に映った名月を眺めて楽しんでいたら、いつの間にか夜が更けてしまった様子が思い浮かびますね。
・名月を 取ってくれろと 泣く子かな(小林一茶)
(訳:あのお月様を取って欲しいと泣く子供がいるよ。)
こちらも先ほどと同じく、「名月」が季語になっており、「取ってくれろ」は「取って欲しい、取ってちょうだい」とねだるような意味の言葉です。
大きくて美しい満月が欲しいと泣く子供に、愛おしさを覚える一茶の心情が詠まれた俳句です。
作者である小林一茶は、子供を始めとして、カエル・スズメなどの小さな生き物を題材にした句が多いです。
この俳句もどことなく、のどかで優しい印象を受けますね。
秋を連想させる俳句!面白いもの二つ
俳句が読める代表的な本として、四季折々の俳句を季節・季語ごとに集めて分類し、解説や例句を載せている「歳時記」というものがあります。
今度はこの歳時記から、秋を連想させる面白い俳句を二つご紹介いたします。
・イソップの 世界に母と 子の夜長(柴田良二)(季語:夜長)
秋分の日を過ぎると、陽が沈むのが早くなり、昼よりも夜の方が長くなりますよね。
残暑もなくなり、涼しい夜の時間をどう過ごすのかが、秋の醍醐味の一つとも言えます。
この俳句は、「アリとキリギリス」「ウサギとカメ」などで馴染み深い、イソップ物語を子供に読み聞かせる、お母さんの様子を詠んだものです。
秋の夜長に、物語の世界に入り込んで、楽しむ親子のほのぼのとした穏やかな光景が思い浮かびますね。
秋の夜長の参考記事
・鰯雲 仰ぎ二三歩 よろめけり(能村登四郎)(季語:鰯雲)
鰯雲(いわしぐも)とは、空高い位置で小さな雲がいくつも集まることで、イワシの群れのように見える雲のことです。
魚の鱗(うろこ)にも見えることから、うろこ雲とも呼ばれます。
台風や移動性低気圧の多い、秋の晴れの日によく見られるため、夏の入道雲と並んで秋を象徴する雲と言えるでしょう。
この俳句は、美しく並んだ鰯雲を仰ぎ見て(=見上げて)いたら、思わず足元がふらついてしまった時の心情を詠んだものです。
清々しい秋空の青と、それを覆う白い鰯雲のコントラストに、ついつい見惚れてしまったのでしょうね。
秋の天気の参考記事
秋を連想させる俳句!作り方の手順は?
例となる俳句をご紹介したところで、実際に秋を連想させる俳句を作るときの手順をご説明します。
俳句はこうやって作ろう!
- 秋の季語を選ぶ
- 選んだ季語から思い浮かぶ場面と、内容を膨らませるような要素をシンプルな文章で書き出す
- 五・七・五の形に当てはめる
- 声に出して読んでみる
それぞれの手順を詳しく説明しますね。
俳句の作り方手順1:秋の季語を選ぶ
俳句には
- 「五・七・五の十七音で構成される」
- 「季語が入っている」
といったルールがあります。
中でも、季語は俳句を読んだ相手にどんな光景なのかを想像させる力があります。
そのため、十七音の中でも特に重要になってきます。
例えば
- 「十五夜」や「お月見」なら、秋の涼しい夜に、空にぽっかりと浮かぶ綺麗な満月
- 「虫の声」なら秋の夜長に聞こえるスズムシやコオロギの声
これらが簡単に想像されますよね。
他にも、
- 10月の第二月曜日に訪れる「体育の日」
- 秋に開催されることの多い「運動会」
など、秋の季語はたくさんあります。
その俳句のテーマになる言葉となりますので、あなたの中にある秋をイメージしやすい言葉を選びましょう。
俳句の作り方手順2:選んだ季語から思い浮かぶ場面と、内容を膨らませるような要素をシンプルな文章で書き出す
季語が決まったら、そこから連想される場面を想像して、簡単な文章で書き出してみてください。
例えば、「空を見上げたら十五夜の満月が見えた」など、できるだけシンプルな文章で書き出します。
そのあと、さらに内容を膨らませるような要素をいくつか書き出します。
満月が見えたのは、
- 星も見えるような雲一つない空だったのか?
- 雲の切間から見えたのか?
このような違いだけでも、思い浮かぶ光景や感じ方が変わってきますよね。
他にも
- 「部活の帰りだったから友達と一緒に満月を見た」
- 「通学路の先に満月が見えた」
など、実際の経験談を元に書き出してみると、より分かりやすくなります。
その光景を見た(想像した)時の、あなたの気持ちも一緒に書き出しておくと、俳句を作る時のヒントになります。
俳句の作り方手順3:五・七・五の形に当てはめる
書き出したい場面が決まったら、あとは俳句の五・七・五の形に当てはめてみましょう。
上手く形にはまらない時は、同じ意味の言葉で言い換えられるものがないか、調べてみると良いものが見つかるかもしれませんよ。
俳句の作り方手順4:声に出して読んでみる
俳句は言葉のリズムがとても大事です。
字数に当てはめて作ってみても、実際に声に出して読んでみると、どうにもしっくり来なかったり、音がつっかえてしまったりする部分が出てくることがあります。
「なんか、ここの部分気に入らないな…」という時は、他に似合う言葉がないか探してみましょう。
秋を連想させる俳句!作り方のコツやポイントは?
手順がわかったところで、最後に作り方のコツやポイントをお教えします。
俳句を作るコツは?
- 読んだ人の想像を膨らませるような言葉を選ぶ
- いろいろな表現技法を試してみる
- 作ったあとは必ず読み返す(推敲する)
それぞれ詳しく説明しますね。
俳句を作るコツやポイント1:読んだ人の想像を膨らませるような言葉を選ぶ
十七音という非常に少ない字数で、あなたが感じたことを全て伝えるのは非常に難しいです。
そのため、俳句で重要になるのは「どこまで相手の想像力を膨らませられるか」という点になります。
どうにかして全てを伝えようとするのではなく、ある程度の解釈は相手の想像力に任せてしまいましょう。
例えば、「十五夜の満月はいつもより綺麗に輝いて見える」というのを印象付けるために、「街灯の光が霞んでしまいそうなほどだ」など、具体的な比較対象を思い浮かべてみると良いかもしれません。
試しにこれを俳句の形式に当てはめてみましょう。
例文
「名月や 霞んで見える 街明かり」
- 十五夜の満月→名月
- 街灯→街明かり
といった類義語に置き換え、さらに月の美しさに感動したことを強調するために、感嘆・強調を表す切れ字「や」を使ってみました。
辞書やインターネットを活用して、よく似た意味の言葉(類義語)を調べてみると、字数に合う、より良い言葉が見つかるかもしれませんよ。
俳句を作るコツやポイント2:いろいろな表現技法を試してみる
表現技法を知っていると、より印象的な俳句を作る手助けをしてくれます。
例えば、先ほどの例文でもご紹介した「切れ字(や・かな・けりなど、文章の意味が切れる所に置く言葉のこと)」は、俳句ではとてもよく使われる表現技法の一つです。
他にも、
- 「十五夜なので、今日の月は誇らしげに輝いている」など、人間ではないものを人間のように例える擬人法
- 「月が綺麗だ→綺麗だ、月が」のように、言葉の順番を入れ替えて感情を強調する倒置法
- 同じ読みの言葉に二つの意味を持たせる掛詞
- 同じ言葉を繰り返して感動を強める反復法
など、さまざまな表現技法があります。
自分にあった表現技法を、俳句に織り込んでみてください。
俳句を作るコツやポイント3:作ったあとは必ず読み返す(推敲する)
俳句に限らず、作ったあとにもう一度読み直してより適切な言葉や表現を探すことを「推敲」と言います。
「完成したからもういいや」ではなく、もう一度読み直してみることで、
- 「こっちの言葉にした方がリズムに合ってるかも」
- 「こっちの表現技法の方がより相手に情景が伝わりそう」
といった発見があることも。
もし時間があるようであれば、日にちを空けて読み直すと、脳がリセットされて、より新しい発見に繋がることもあるのでオススメです。
さいごに
涼しい風が吹き始め、お月見や運動会などの行事も増える秋は、さまざまな場面で季節の変化を感じることができます。
ぜひあなたなりの言葉で、秋の俳句を詠んでみてくださいね。