冬の俳句なんて、作り方が分かりません!
俳句をいくら作っても、普通の文章にしかなりません。
どうすればいいでしょうか?
俳句は、五・七・五の十七音という限られた音数(字数)で、心に残る風景や出来事を情緒たっぷりに書き表します。
俳句そのもののリズムや語感も、同時に楽しむことを目的に作られることが多いです。
あなたの表現力や文章力の向上にも、俳句を楽しみましょう。
ところで、学校で「冬を連想させるような俳句を作ってきてください」と課題を出されて、困っていませんか?
俳句を上手に簡単に作れたら、誰も苦労はしませんよね。
そこで今回は、「冬」を連想させる俳句をいくつかご紹介します。
また、俳句を作る時のコツや作り方の手順などを、分かりやすくお教え致します。
俳句の参考記事も!
冬を連想させる俳句!有名なもの3つ
まず最初に、有名な俳人が作った冬の俳句を3つ、解説を交えてご紹介致します。
・いざ子ども はしりありかん 玉霰(たまあられ)(松尾芭蕉)(季語:玉霰)
(訳:さあ子どもたちよ、走りまわろう。玉のようなあられが降ってきたぞ。)
霰(あられ)とは、直径5ミリ未満の氷の粒のことです。
空から降る雪に、空気中の水分がくっつき、氷の膜を作ることで生まれます。
雪かと思ったら霰が降ってきたので、子どもたちがはしゃいで走り回っている様子が想像できます。
元気に走り回る子どもたちの様子を見守る芭蕉も、微笑ましい気持ちでこの句を詠んだのかもしれませんね。
・斧入れて 香におどろくや 冬木立(与謝蕪村)(季語:冬木立)
(訳:すっかり葉を落とした冬木に斧を入れると、切り口から新鮮な木の香りが漂い鼻をついた。これほどまでの生気が冬木の内部にあるなんて。)
冬になると、葉っぱを落として枯れたように見える木々。
しかし、私たちの目には枯れたように見えていても、木々は次の春に備えてエネルギーを蓄えています。
蕪村はきっと暖炉などに使う薪を取ろうとして、冬木を伐採しようとして斧を入れたのでしょう。
その瞬間に鼻をついた新鮮な木の香りに、「枯れているように見えたのに!」と驚き、冬木の生命力に感動している顔が目に浮かぶようです。
・うまさうな 雪がふうはり ふわりかな(小林一茶)(季語:雪)
(訳:美味しそうな雪が、ふわりふわりと空から落ちてくるなぁ。)
冷たくて寒々しい冬を象徴する雪ですが、「ふうはり、ふわり」と降る真っ白な雪と言われるとどうでしょう?
甘くてふわふわした、綿菓子のような柔らかそうな雪が降ってきているような気がしませんか?
雪の中でも、牡丹(ボタン)の花びらのように、大きく柔らかそうな見た目の雪を「牡丹雪(ぼたんゆき)」と呼びます。
何気ない冬の日で、雪が降るほどの寒さであることには変わりないのに、牡丹雪を眺めて美味しそうだと考える一茶の様子を思い浮かべると、なんだかちょっと微笑ましくて温かい気持ちになりますね。
冬を連想させる俳句!面白いもの2つ
「俳句って昔の人が作ったものがほとんどでしょ?」と、あなたは思うかもしれません。
でも実は、現代にも俳句を作る俳人たちは多くいます。
俳句を季語・季題ごとに集めて分類して、解説とともに載せる「歳時記」という本があります。
そこには現代の俳人たちが多くの作品を掲載しています。
それでは、「歳時記」に寄せられた冬がテーマの俳句の中から面白いものを2つ、解説を交えてご紹介します。
・寒月に オリオンの盾 力失せ(稲岡長)(季語:寒月、オリオン)
(訳:厳しい寒さの夜に冴える月に、あのオリオンの盾も力を失ってしまうようだ。)
「寒月(かんげつ)」とは、寒さが厳しくなる晩冬(冬の終わり頃)の夜空にくっきりと浮かぶ月を指します。
「オリオン」は冬の代表的な星座であるオリオン座のことです。
俳句に季語が二つ入ることを「季重なり」と呼び、基本的には避けられることが多いです。
しかし、この句の「寒月」と「オリオン」のように、お互いを尊重し合うような組み合わせであれば使えることもあります。
ちなみにオリオンはギリシャ神話の中でも一番の狩人で、また月の女神アルテミスと恋人関係だったというお話があります。
この俳句も、おそらくその逸話に基づいて作られたものと思われます。
身に染みるような、厳しい寒さの夜空に冴える月は、あの強いオリオンの頑丈な盾も力を失ってしまうほど美しく見えたのでしょうね。
・ぬくもりの 通ふキルトの 炬燵掛(吉川智子)(季語:炬燵(こたつ))
(訳:キルト生地の炬燵布団には、炬燵の熱だけではないぬくもりが込められている。)
「キルト」とは、2枚以上の布の間に薄く綿を含ませて縫い合わせる技法で作られた生地のことです。
日本では複数の布を繋ぎ合わせて一枚の布にする技法「パッチワーク」と組み合わせて「パッチワークキルト」として作られることが多いです。
手芸を趣味にしている人たちの中には、自分で手作りのキルトを作る人もいるのだとか。
この句に登場するキルトの炬燵布団も、作者が自分で、もしくは家族などの親しい人が作ってくれたものなのでしょうか。
人が作ったものの暖かみを感じて、ほっこりするような冬の一幕が思い浮かばれますね。
冬を連想させる俳句!作り方の手順は?
ここまで、俳人たちの作った冬の俳句をご紹介してきました。
ここからは実際に、冬を連想させる俳句を作る時の手順についてご紹介していきます。
冬の俳句を作る手順
- 冬の季語を選ぶ
- 選んだ季語から連想される場面や要素を簡単な文章で書き出してみる
- 五・七・五の形に当てはめて、声に出して読んでみる
それぞれを詳しく解説していきます。
手順①:冬の季語を選ぶ
- 「五・七・五の十七音で成り立つ」
- 「季語が入っている」
といったルールを持つ俳句を作る時は、まずはテーマになる季語を決めます。
俳句を読んだ相手に、どんな光景を詠んだ俳句なのかを伝えるためにも、大事になってくるものです。
これだ!と思う季語を入れるようにしましょう。
「冬の海」や「冬の夜」など、直接冬という言葉を入れたものはもちろん、「ストーブ」や「こたつ」などの暖房器具、「鍋」や「おでん」などの冬ならではの食べ物、「オリオン(座)」や「寒月」などの冬の空や気候にまつわる言葉などが冬の季語として使えます。
他にも、「クリスマス」「大晦日(大みそか)」などの行事や、「スケート」「スキー」などのウインタースポーツも冬の季語として使えますよ。
ただし、「お年玉」や「初詣」など、年明け後に関する言葉は「新年」の季語になり、「冬」の季語とは別のカテゴリーになるので注意してくださいね。
手順②:選んだ季語から連想される場面や要素を簡単な文章で書き出してみる
季語を選ぶことが出来たら、今度はそこからどんな場面が連想されるかを想像して文章にしてみてください。
- 「空を見上げたらオリオン座が見えた」
- 「朝起きたら雪が積もっていた」
など、簡単な文章で大丈夫です。
簡単に場面を書き出すことが出来たら、そこへさらに内容を膨らませる要素を加えてみましょう。
例えば、「朝起きたら雪が積もっていた」という文章でも、その日の天気が晴れであれば、きっと積もった雪が太陽の光を反射して輝いて見えることでしょうし、まだ雪が降り続いているようであれば、積もった雪もより冷たい印象を受けることでしょう。
このように、付け加える要素によっては、思い浮かぶ光景も感じ方も変わってきますよね。
また、
- 「雪が積もっていて自転車では通学が出来ないから、歩いて行くことにした」
- 「通学路で友達と雪合戦しながら学校へ行った」
など、あなたがその場面に直面した時に起こすであろう行動や、実際の経験談などを付け加えるのもいいですね。
手順③:五・七・五の形に当てはめて、声に出して読んでみる
書き出したい場面が決まったら、実際に五・七・五の文章の形に当てはめていきましょう。
音数(字数)が決まっている俳句は、言葉のリズムがとても大事です。
字数に当てはめて作ってみても、実際に声に出して読んでみると、しっくり来なかったり、言葉がつっかえたりする部分が出てくることがあります。
「なんかここの部分気に入らないな…」と感じた時はそのままにせず、他に似合う言葉がないか探してみましょう。
冬を連想させる俳句!課題を乗り切る攻略法3つ
「作り方は分かったけど、どうせならもっと上手く作れるコツとかないかな?」と悩んでいませんか?
そんなあなたに、作り方のコツやポイントをお教えします。
冬の俳句を作るコツ
- 読んだ人が想像力を膨らませられるような言葉選びをする
- いろいろな表現技法を試してみる
- 完成したら必ず一度読み返す
それぞれを詳しく説明しますね。
コツ①:読んだ人が想像力を膨らませられるような言葉選びをする
俳句で重要になってくるのは、「相手の想像力をどこまで膨らませられるか」という点になります。
あなたが感じたことを、十七音だけで全て伝えるのは非常に難しいです。
必要最低限の言葉だけ俳句にして、あとは読んだ相手の想像力に任せる必要があります。
あなたの俳句を読んだ人に、どんな光景を思い浮かべて欲しいのか、どんな気持ちになって欲しいのかを考えて、言葉を変えてみましょう。
コツ②:いろいろな表現技法を試してみる
これは①の項目でお話しした「相手の想像力を膨らませる言葉選び」にも繋がってきます。
俳句における様々な表現技法を知っていると、より印象的な俳句を作る手助けをしてくれますよ。
例えば、「切れ字」は、俳句ではとてもよく使われる表現技法の一つです。
切れ字とは、「や・かな・けり」など、文章の意味が切れる所に置く言葉のことです。
「斧入れて 香におどろくや 冬木立」の句では、「おどろく(驚く)」に強調を意味する「や」の切れ字が付くことで、斧を入れた途端に香った木の匂いに驚いた作者の心情をより印象付けてくれています。
また、句の最後を「冬木立」にしているのも、「体言止め」「倒置法」と呼ばれる表現技法になります。
「体言止め」は最後を体言(=名詞)にすることで文章で描かれた光景の余韻を残します。
「倒置法」は本来「冬木立(の)、香におどろく」となる文章の順番を逆にすることで、光景をより強く印象付けることができます。
他にも、人間ではないものを人間のように例える「擬人法」や、同じ言葉を繰り返して感動を強める「反復法」など、さまざまな表現技法があります。
自分にあった表現技法を探してみてくださいね。
コツ③:完成したら必ず一度読み返す
俳句に限らず、文章を作ったあとに、もう一度読み直して、より適切な言葉や表現に書き直すことを「推敲する」と言います。
完成してから改めて読み直してみると、
- 「こっちの言葉の方が俳句のリズムに合ってるかも」
- 「この言い回しの方が相手に光景が伝わりそう」
といった発見があることも。
「完成したからもういいや」ではなく、ぜひ一度まっさらな気持ちで自分の作った俳句を読み直してみてください。
眠ることで脳がリセットされるため、日にちを空けて読み直すと、より新しい発見に繋がることもありますよ。
さいごに
雪景色や枯れ木、クリスマスや年末など、この季節ならではの光景や行事の多い冬です。
ぜひあなたなりの言葉で、素敵な俳句を作ってみてくださいね。
今回の手法をもとに。