良い宿に泊まったり、一流のレストランに行った人の感想を聞くと、
- 「あの宿は至れり尽くせりのサービスだった」
- 「至れり尽くせりの接客で大満足でした」
という言葉を耳にします。
とても良いサービスや接客だったというのは分かりますが、「至れり尽くせり」本来の意味や使いかたは、どの様になるのでしょう。
今回は、「至れり尽くせり」の意味や由来などについて詳しく解説していきます。
旅館やホテル業務に対して多く用いられますが、具体的な使い方が分かりづらい表現でもありますので、この機会に理解しておくと便利かもしれません。
「至れり尽くせり」の意味や語源は?間違い例と正しい例は?
「至れり尽くせり」とは
・細かいところまで配慮が行き届いていて申し分がない
という意味になります。
例えば、わかりやすいシチュエーションとして、
誕生日の夕飯が、僕の大好きな鶏のから揚げとピザ、イチゴのケーキもあって、おまけにプレゼントは前から欲しかったゲームだったので、超テンションが上がったよ
このような状況が「至れり尽くせり」になります。
子どもにとっては夢のような状況ですね。
普段の使い方としては、
例文
- 「高級ホテルに泊まったら、食事も美味しく接客も丁寧、部屋も隅々まで掃除が行き届いていて、まさに至れり尽くせりのサービスでした」
- 「食事の準備だけでなく、掃除やふろの準備までしてくれるなんて、まさに至れり尽くせりな商売だ」
このように、飲食店や宿泊施設の「サービス」や「接客」などに対し用いられることが多く、主に誉め言葉として使われる言葉です。
「至れり尽くせり」の由来は、「至る」と「尽くす」二つの言葉の意味からきています。
「至る」は
- 極限に達する、きわまる
という意味があり
「尽くす」は
- 他者のため精いっぱい働いたり努力したりする、尽力する
という意味があります。
そこから、両方を合わせた「至れり尽くせり」は
- 配慮が行き届いて申し分がない
の意味で使われるようになりました。
また他にも、中国戦国時代の思想家荘子が書いた『斉物論』が由来ともいわれています。
『斉物論』の中に
- これ以上何かを加える必要がないくらい完璧な状態
という意味で、
「至れり尽くせり。以て加うべからず」
という一文が使われていたところから、
「至れり尽くせり」=「これ以上ない完璧な状態」=「配慮が行き届いて申し分ない」
という意味で使われるようになったそうです。
注意しなければいけないのが、
間違い例
- 「至り尽くせり」(いたりつくせり)
- 「致せり尽くせり」(いたせりつくせり)
このように、言い間違い・書き間違いされることが多いことです。
「至れり尽くせり」は「至る」と「尽くす」の命令形、「至れ(いたれ)」「尽くせ(つくせ)」に、完了の助動詞「り」がついた言葉になるので、
「いたれりつくせり」
が正しい言葉になります。
「至れり尽くせり」の類語、言い回し、対義語は?英語では何ていう?
「至れり尽くせり」と同じような意味の言葉に、「心づくし」があります。
「心づくしは」
- 相手のために真心を込めて行うこと
という意味があります。
- 「心づくしの手料理を振る舞う」
- 「心づくしのおもてなしを頂き、誠にありがとうございます」
のように使い、「至れり尽くせり」同様、相手のことを考えて行うことを表します。
ただし、「至れり尽くせり」は
- 相手から気を遣ってもらった時に使う
ことが一般的になります。
一方、「心づくし」は
- 相手のために真心を込めて行うこと
を意味しています。
他にも「至れり尽くせり」と似たような意味の言葉に、「懇切丁寧」があります。
「懇切丁寧」は
- 細かいところまで注意が行き届いていて、とても手厚く親切な事
という意味になります。
- 「子どもにもわかるように、懇切丁寧な説明を行った」
- 「お忙しいにもかかわらず、懇切丁寧な対応をしていただきありがとうございます」
などのように、目上・目下どちらへも使うことが出来ます。
「至れり尽くせり」の対義語には、「踏んだり蹴ったり」があります。
「踏んだり蹴ったり」は
- 重ね重ねひどい目に合うこと
という意味になります。
先ほど、「至れり尽くせり」の例文で使用した
「高級ホテルに泊まったら、食事も美味しく接客も丁寧、部屋も隅々まで掃除が行き届いていて、まさに至れり尽くせりのサービスでした」
の内容を反対の意味にしてみると、
「高級ホテルに泊まったのに、食事も不味く、接客態度も不親切、部屋も汚れが目立っていました」
となって、まさに「踏んだり蹴ったり」の状況そのものですね。
「至れり尽くせり」の英語表現には幾つかありますが、一番簡単で分かりやすいものは
「perfect」になります。
「perfect」には
- 完璧な、申し分ない、非の打ちどころのない
という意味があります。
「The restaurant gave us perfect service」
は直訳すると
「そのレストランは完璧な(申し分ない)サービスをしてくれた」
ですが、含まれているニュアンスは
「そのレストランのサービスは、まさに至れり尽くせりだった」
という意味になります。
「至れり尽くせり」と「かゆいところに手が届く」の違いは?
「至れり尽くせり」と同じようなニュアンスの言葉に「かゆいところに手が届く」があります。
「かゆいところに手が届く」は
- 細かいところまで配慮が行き届いていて、気が利いていることのたとえ
という意味になります。
心遣いや配慮が行き届いているという点では、「至れり尽くせり」とほぼ同じと言えます。
ただ、「かゆいところに手が届く」の場合は、
- レストランで、言われなくても取り皿を追加してくれる
- 受付のカウンターに老眼鏡が置いてある
などのように、
「先取りして行動したり提供したりしてくれる」
といったニュアンスで使われることが多く、
「至れり尽くせり」の場合は、
- 旅館での出迎えの挨拶や料理の配膳、布団の支度
などのように、
「日常的な業務の細部まで気を遣ってくれる」
といったニュアンスで使われることが多いという違いがあります。
さいごに
以上、「至れり尽くせり」の意味や由来などについて解説してきました。
「至れり尽くせり」は、「細かいところまで配慮が行き届いている」状態を表すだけでなく、自分の満足と感謝を伝える言葉でもあります。
相手の配慮や気遣いを感じたら、積極的に使ってみて下さい。