「もう欲しくないのになぜ食べさせようとするの?」
食事介助中、利用者様にそう言われたこと、あなたにはありませんか?
介護の仕事に就いた当初の私は、日々そのような言葉を聞いていました。
しかし、「食べてもらわなきゃ」という、責任感のもと食事介助を行っていました。
認知症の利用者様はなぜ食事を嫌がるのか、その理由。
また、どう対処すればいいのかを、
当時の私の失敗談を交えながら対処の仕方をお話ししていきます。
認知症利用者様が食事介助を嫌がる理由は?
認知症の利用者様が食事を嫌がる理由は以下の通りです。
- 食事を認識できていない
- 体調がよくない
- 食事が飲み込めない
それぞれについて、説明していきますね。
1.食事を認識できていない
利用者様には食事を認識できないこともあります。
目の前にあるものが食事に見えないものだったり、食事よりも興味を示す何かがあったり、理由は様々です。
例えば料理法によっては、食べ物の原形をとどめていない、そんなこともよくありますよね。
また、テレビをつけっぱなしにして食事介助をしようとすると、そちらに興味を示されることもあります。
食事を食事と認識できなければ、食べたくないっていうのも分かります。
2.体調がよくない
利用者様の体調がすぐれない可能性もあります。
私も慣れてないうちは、利用者様の体調を気にせず食事介助をしようとしていました。
でも、ある時気づいたのです。
高熱が出たりしたら食事なんてしたくない。
認知症利用者様だって一緒です。
身体が苦しいのに、食事なんてしたくありません。
体調がすぐれないときには食事を拒否されることも多いのです。
3.食事が飲み込めない
食事が上手いこと飲み込めないものであることもあります。
かたいものだったり、大きいものだったりすると食べにくいですよね。
利用者様だってそういうのには敏感です。
私たちなら簡単に食べられるものでも、利用者様にとっては食べにくいものは当然ながら嫌がります。
食事介助を嫌がる利用者様への対処法を理由別に解説
上に挙げた、食事介助を嫌がる理由は、次の3つでした。
- 食事を認識できていないから
- 体調がよくないから
- 食事が飲み込めないから
この3つの理由にどう対処すればいいのか?
対処法をそれぞれ解説していきますね。
1.食事を認識できていない場合の対処法
食事を認識できていない場合、以下の2点に着目します。
- 食べ物と認識できていない場合
- 食事以外に興味をそそることがある場合
食べ物と認識できていない場合
食べ物と認識できない場合、私なら食事の元の形について説明します。
食事によっては、全く違った形のものになった、そんなことは多数あります。
なので利用者様に、もともと何を使って作ったものか、しっかり説明します。
例えばコロッケならば、「これはジャガイモを使っていて、油で揚げています」というように説明します。
さらにワンポイントアドバイスとして、「おいしいですよ」と言って差し上げるとさらに良いでしょう。
何を使っているものかわかれば、食事を嫌がる事も少なくなります。
食事以外に興味をそそることがある場合
食事以外に興味をそそることがある場合、そちらを先に対処します。
例えば、テレビが気になるならば「後でテレビを見ましょう」と声かけの上、テレビを消しておきます。
ただし、利用者様の許可を得ずに対処するのはいけません。
利用者様だって、興味があるからそちらに集中してたので、気分を損ねて食事をとってもらえなくなってしまいます。
2.体調がよくない場合の対処法
体調がよくない場合は、素直に食事介助を止める選択肢も持ちましょう。
高熱が出ていたり、食欲がない場合に無理に食事していただいても、後々困ったことになります。
食後に吐いてしまったり、余計に体調が悪化することもあります。
そういう時は食事をしない、という選択肢を選ぶ事も重要です。
3.食事が飲み込めない場合の対処法
利用者様によっては、食事が飲み込めない場合もあります。
飲み込めない場合は以下の二点の原因が考えられます。
- 食事の大きさ、かたさ
- 飲み込む力が弱い
それぞれ、簡単に解説しますね。
食事の大きさやかたさの場合
この場合は小さく刻んだり、柔らかくしてあげましょう。
特に入れ歯をしている方にとっては、固すぎると食べてくれませんので、小さく柔らかくする必要があります。
飲み込む力が弱い場合
これは私も最初分からずに普通に食事介助していたんです。
普通に食べられるだろうからと、どんどん食事をとっていただいていたんです。
そうするとむせてしまい、それ以降食事をとっていただけませんでした。
そういう場合、片栗粉や市販のとろみ材を使用しましょう。
粘り気が出来て、飲み込みやすくなります。
しかし、とろみをつけすぎると逆に飲み込みにくくなってしまいますので注意してください。
食事介助で拒否されにくい2つのコツ
食事介助で拒否されにくいようにするには2つポイントがあります。
- 安心できるような声かけをする
- 根気良く見守る
それぞれについて解説しますね。
1.安心できるような声かけをする
目の前にあるものは何なのか、味はどんな味かなど、利用者様がこれを食べてもよいと安心できるような声掛けをしましょう。
認知症利用者様は、目の前のものが得体のしれないものと思うときもあります。
そういう時はしっかり説明して差し上げ、食事に興味を持っていただく声かけをしましょ
う。
そうすることで、利用者様も快く食事していただけます。
2.根気良く見守る
中には声かけでは食べてくれないこともあるでしょう。
利用者様だって、欲しくないときはどうしても欲しくないってときだってあります。
また、食べにくい物が混じっていたりする時もあります。
利用者様がどういう反応をしているか、全く食べようとしないか等しっかり確認しましょう。
そうすることで、食べていただけない理由も見えてきます。
まとめ
私の日常の介助の経験からすると、認知症利用者様にとって食事は一番の楽しみ時間です。
もし拒否されるなら、何かしら理由があります。
恐れずにその理由を見つけ出してみましょう。
意外と単純な理由が多いのです。
その理由を見つけられた時、あなたと利用者様との関係が一層深まることでしょう。
利用者様にとって一番の楽しみな時間に、あなたが「食事介助」という形で加わる喜びを、どんどん味わってくださいね。