「板につくってどういう意味?なぜ板なの?」
「板についてきた」という言葉を一度は耳にしたことがあると思います。
何かが出来るようになり、褒めたりするときに使うイメージがありますが、なぜ「板」なのでしょう。
ここでは、「板につく」の意味や由来などについて詳しく解説していきます。
これからの季節、使う機会も多いと思うので、この機会に知っておくと便利かもしれませんね。
「板につく」の意味や語源は?間違い例と正しい例は?
「板につく」を辞書で調べてみると、
役者が経験を積んで、演技が舞台によく調和する
経験を積んで、動作や態度が地位・職業などにしっくり合う
とあります。
これをわかりやすく解釈すると
例えば、
「A君も学級委員になって半年、最初は頼りなかったけれど、会議の進行や行事の準備などを経験して、今ではすっかりクラスをまとめてリーダーシップを発揮していますね」
という、こういった状況が
「学級委員が板についてきた」
になります。
「板につく」の由来は、その意味するところの一つでもある、
役者が経験を積んで、演技が舞台によく調和する
という様子から生まれたと言われています。
「板につく」の「板」は
- 「舞台の床板」
の意味です。
「つく」は、「身につく」という言葉もあるように
- 「ある能力・技術が備わる」
という意味があります。
そこから転じて
「舞台の上で能力や技術が備わる」=「経験を積んで、動作や態度が地位・職業などにしっくり合う」
という意味になり、その様な様子を「板につく」と言うようになりました。
日常での使い方は、
例文
- 「あの役者さんは以前と比べ、今の役がだいぶ板についてきた」
- 「東京に出てきて10年も経つと、標準語も板についてきたね」
- 「彼の包丁さばきもだいぶ板についてきたので、次は違う料理を任せよう」
などのように、目上の人が、自分より下の立場の人を褒めるときに使います。
これは「板につく」の由来に関係します。
「板につく」は、元々役者の成長を観客が褒めるという行為から生まれました。
そのため、観客目線で役者を評価する言葉になるので、目上の者が目下のものを、褒めたり評価するときに使う言葉になります。
したがって上司などに、
- 「スーツ姿が板についていますね」
のように使うのは間違いになります。
「板につく」の類語、言い回し、対義語は?英語では何ていう?
「板につく」と同じような意味の言葉として「物にする」があります。
「物にする」は
- 手に入れる、所有物にする
といった意味があります。
- 「ようやく念願だった車をものにした」
のように、物質的なものも表しますが、この場合は
- 「毎日ラジオを聞いて英会話をものにした」
といった、能力や知識を表します。
他には「身につける」も同じような意味になります。
「身につける」も
- 「彼女はいつもお守りを身につけている」
- 「お気に入りの洋服を身につけて出かけた」
のように、体につけたり、着たりする意味もありますが、この場合は
- 「サッカー教室で技術を身につけた」
- 「大学は専門知識を身につけるところだ」
などのように、知識・学問・技術などを自分のものにするという意味になります。
ちなみに、服やアクセサリーなどを付ける場合は
- 「身に着ける」
知識・学問・技術などを自分のものにする場合は
- 「身に付ける」
と表記します。
「板につく」の対義語として「半人前」があります。
「半人前」とは
- 技能や経験が不足して、人並みの半分の働きしかできないこと
という意味になります。
- 経験を積んで一人前になる
という意味の「板につく」とは正反対の意味になります。
また、「未熟」も「板につく」の対義語と言えます。
「未熟」には、果実・作物などがまだ十分に熟していないことという意味のほかに、
- 学問や技術などの経験、修練がまだ十分でないこと
という意味があります。
簡単に言うと
- 経験不足、勉強不足
と言うことになり、これも「板につく」と反対の意味になります。
「板につく」の英訳としては、
- 「to become accustomed to」
があります。
「~になる」という意味の「to become」と
「~に慣れて」という意味の「accustomed to」
を続けてつなげることで、
「~に慣れる」
という意味になり、
- 「He got accustomed to English」(彼の英語は板についてきた)
のように使います。
また、「to get used to」も「板につく」の英訳と言えます。
「get used to~」で「〜に慣れる」の熟語になるので、
- 「He seems to have got used to driving a car」(彼の車の運転ぶりは板についてきたよう だ)
のように使います。
「板につく」と「堂に入る」「様になる」の違いは?
「板につく」と同じような意味の言葉に、
- 「堂に入る」
- 「様になる」
があります。
どちらも、動作などが「身についている」、という意味のイメージがありますが、どういった違いがあるでしょう?
「堂に入る」は「どうにいる」と読み、論語の一説の
- 「堂に升(のぼ)りて室に入らず」
を略した言葉で、
- 学術、技芸などが優れて深奥をきわめている
- 技術などが十分身についている
という意味があります。
つまり、「堂に入る」は
- 「学問や仕事を極め、一流の技術を身に付けた人に対し、尊敬を表す時に使う言葉」
になり、
それに対し「板につく」は、
- 「新入社員だった彼もだいぶスーツ姿が板についてきたようだ」
と使われる様に、
「目上の人が、自分より下の立場の人を褒めるときに使う言葉」
といった違いがあります。
では、「様になる」はどうでしょう。
「様になる」は
- それらしくなる、それっぽくなる、格好がつく
と言う意味で
「状態」「姿形」「格好」
といった、見た目や表面的にそれらしく見えるような場合に用いたりします。
つまり、
- 「経験を積んで、動作や態度が地位・職業などにしっくり合う」
ようになるのが「板につく」になり、
- 「内面や技術といったことを追求するのではなく、表面的にそれらしく見える」
といった状態を表すのが、「様になる」になります。
さいごに
以上、「板につく」の意味や由来などについて解説してきました。
あなたの部下や子供、教え子といった人の成長に気付いたりしたときは、ぜひ誉め言葉として使ってみて下さいね。