出張で地方に出かけた時や営業に行く時、お土産のお菓子を買うことがありますよね。
ところで、今「お土産」と書いてある部分は何と読んでいましたか?
おそらく「おみやげ」と読んでいたかと思います。
では、なぜ土に産むと書いて「みやげ」と読むのかご存知ですか?
土も産も単体で書くときの読み方とは全く違うのに、なぜ二文字が繋がると「みやげ」なんて読み方になるのでしょうか。
「土産」を含めて、不思議な読み方をする漢字は日常生活の中でも数多く存在しますよね。
今回はそんな特殊な読み方をする漢字についてご紹介します。
「訓読み」とは?例文で意味を解説
最初に、漢字の基本の読み方の一つである「訓読み」についてご説明致します。
「そんなの学生時代に習ったよ!」と思われたかもしれませんが、改めて復習してみましょう。
漢字とは元々中国で生まれ、4世紀から5世紀頃に日本に伝来したものです。
その頃は中国で使われていた発音を元にした読みを使用していました。
しかし徐々にその漢字の意味を表す日本語としての読み方が割り当てられ、使われるようになっていきます。
この「意味を表す日本語としての読み方」が訓読みです。
反対に中国での発音を元にした読み方は音読みと呼ばれます。
例えば「山」という字は音読みだと「サン」、訓読みだと「やま」と読みます。
「サン」とだけ言われても何のことかピンと来ませんが、「やま」と言われたら山の話だと分かりますよね。
これが基本の「訓読み」です。
どんな特殊な読み方も、実はこの基本的な読み方を派生させたものばかりなんです。
では改めて、特殊な読み方の漢字についてご紹介致します。
「当て字」とは?例文で意味を解説
まずは当て字について。
当て字は、漢字の本来の用法を無視して表される字のことです。
「訓読み」の項目でも説明した通り、漢字にはその漢字の持っている意味と音(読み方)があり、その両方を満たした使い方が本来の用法で、どちらか一つでも違えば当て字となります。
当て字は
- 「その漢字の持ってる意味を無視して、漢字の音(読み方)だけを優先したもの」
- 「漢字の音(読み方)を無視して意味だけを優先したもの」
この二種類があります。
音だけを優先した当て字は、外国の名前に漢字を当てたものを思い浮かべてもらうと分かりやすいですよ。
例えば
- ドイツは「独逸」
- フランスは「仏蘭西」
- イタリアは「伊太利亜(伊太利と表記されることもあります)」
と書かれているのをニュースや新聞で見たことはありませんか?
このように、漢字本来の持つ意味は無視されて、読み方だけで構成されたものが当て字と呼ばれます。
「熟字訓」とは?難しい例文や面白い例文で意味を解説
熟字訓とは、二文字以上からなる漢字(熟字)に訓読みを当てたものです。
この時、漢字がそれぞれ持つ本来の読み方は無視され、意味だけが優先されます。
「漢字の音(読み方)を無視して意味だけを優先したもの」……
そうです、熟字訓は訓読みの仲間であり、当て字でもあるのです。
一番最初に挙げた「土産」は、この熟字訓に含まれます。
旅先から持ち帰るその「土」地の「産」物のことを日本語では「みやげ」と呼ぶので、「土産」にこの読みが当てられました。
また、この熟字訓に含まれるもので「混凝土」と書くものがあるのですが……
この漢字の読み方、分かりますか?
実はこれ、「コンクリート」と読みます。
「なんでそうなるの!?」と思ったでしょう?
では、漢字の意味を一つずつ考えてみましょうか。
「混」は文字通りかき混ぜること、「凝」の字は液体が寄り集まって固まることという意味があり、凝固や凝縮といった熟語にも凝の字が含まれています。
つまり、(材料を)混ぜて固まった土=コンクリート、ということです。
このように、漢字それぞれが持つ読み方は無視して意味だけを優先したものが熟字訓です。
「義訓」とは?難しい例文や面白い例文で意味を解説
訓読みにはもう一つ、「義訓」と呼ばれるものがあります。
これは漢字に訓読みや音読みなどの固定の読み方ではなく、文脈に合わせてその場限りの読み方を当てることを指します。
この一時的な読み方が固定化され、広く用いられるようになると「熟字訓」となります。
古いものだと明治時代、文明開化によって日本に入ってきた西洋文化のカタカナ読みが、日本の漢字に当てられたものがあります。
例えば
- 「緑玉」と書いて「エメラルド」
- 「白金」と書いて「プラチナ」
と読むのも義訓の仲間です。
読み方はかなり独特ですが、なんとなく分かる気がしませんか?
最近では漫画や小説の中で、物語の世界観をより深くするために、義訓が用いられることが度々あります。
有名な漫画だと、ONE PIECEの主人公ルフィの技で「(ゴムゴムの)銃」と書いて「ピストル」と読み仮名が振られているのが例として挙げられます。
このように、漢字それぞれに最初から割り振られている固定の読み方ではなく、文脈に合わせてその場限りの読み方を当てたものを義訓と言います。
まとめ(それぞれの違いや見分け方や使われ方なども)
最後に、今まで紹介した漢字の読み方について簡単にまとめてみましょう。
- 訓読み→基本の読み方で、漢字そのものの意味を表す日本語としての読み。
- 当て字→(主に)漢字の持ってる意味を無視して、漢字の音(読み方)だけを優先したもの。
- 熟字訓→漢字の音(読み方)を無視して意味だけを優先したもの。
- 義訓→文脈に合わせてその場限りの読み方を当てたもので、読み方が普及していくと「熟字訓」として定着する。
いかがでしたか?
普段よく使う言葉でも、多種多様な読み方が割り振られていることがお分かりいただけたでしょうか。
この記事を読んで「他にはどんな熟字訓や義訓があるんだろう?」と興味を持っていただけたのなら、ぜひお時間があるときに調べてみてくださいね。
きっと面白い発見があると思いますよ。