- 「この食べ物めっちゃ辛い!」
- 「仕事が多すぎて辛い・・・」
この2つの文章、どちらも「辛い」という言葉(漢字)が使われています。
しかしこの「辛い」という言葉、あなたも普段の生活で目にしたら、こんな疑問を感じた事がありませんか?
その疑問とは「からいとつらい、読み方がどっちか分からない!」というもの。
上の2つの文章も、
- 1つ目は「からい」
- 2つ目は「つらい」
と読むのが正解。
「からい」と「つらい」では意味も違うので、正しく読まないと、おかしな文章になってしまいますよね。
例文では、どう読むかが分かりやすい文章に、あえてしました。
しかしこれが「唐辛子を食べると辛い!」といった文章だとします。
こうなると正しい読み方がどちらなのか、分からなくなってしまいますよね。
そこで今回の記事では、この「辛い」の読み方に関する悩みを、わかりやすく解決します!
なぜ同じ漢字なのかだけでなく、語源や見分け方についても解説していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。
参考記事もどうぞ
「つらい」と「からい」の意味は?英語では何ていう?言い換えは?使い方を例文で解説
まず最初に「辛い」の「辛」という漢字について知っていきましょう。
漢字辞書で「辛」を調べてみると、こういった事が記載されていました。
- 五味の一つ。からい。からい食物。
- 心がいたみうずく。つらい。くるしい。
- 十干の第八。
今回の記事で重要となる項目は、1と2の部分ですね。
意味を見ても分かる通り、この「辛」という字には元から「からい」と「つらい」の2つの意味を持っているのです。
「辛い(つらい)」には
- 「彼は私にいつも私に辛く当たる」
のような、他人に対して冷酷であるといった意味。
- 「学生の頃、いじめにあい、辛い思いをした」
のような、精神的にも肉体的にも、我慢できないくらい苦しいといった意味。
- 「私は辛い立場にいる」
のような、対処が難しい、困難であるといった意味があります。
つまり「辛い(つらい)」は、苦しい状況や困難な状況を指すようなときに使われます。
英語では、「冷酷な」「残酷な」といった意味の
- 「cruel」
「苦しい」「苦痛な」といった意味の
- 「bitter」
「難しい」「困難な」といった意味の
- 「difficuly」
などで表現されます。
「つらい」を言い換える場合も
- 「彼は私にいつも私に辛く当たる」→「彼は私にいつも私に冷酷に当たる」
- 「学生の頃いじめにあい、辛い思いをした」→「学生の頃いじめにあい、苦しい思いをした」
- 「私は辛い立場にいる」→「私は難しい立場にいる」
のようになります。
一方、「辛い(からい)」には
- 「この店の料理はインド風で辛い料理です」
のように、トウガラシ、ワサビなどのように、舌や喉を強く刺激するような味といった意味。
- 「母の作る煮付けは味が辛い」
のように、塩気が多い、しょっぱいといった意味。
- 「彼の採点は他の人よりも辛いことで有名です」
のように、評価の基準などが厳しいといった意味があります。
「辛い(からい)」は、味に関する意味がメインになりますが、
- 苦しい様子
- 残酷でむごいこと
- 危ない状況
といった、「つらい」と同じような意味も含まれています。
英語では
「ぴりっとした」や「しょっぱい」といった意味の
- 「spicy」
- 「salty」
「厳しい」「厳格な」といった意味の
- 「strict」
などで表現されます。
「からい」を言い換える場合も
- 「この店の料理はインド風で辛い料理です」→「この店の料理はインド風でスパイシーな料理で す」
- 「母の作る煮付けは味が辛い」→ 「母の作る煮付けは味がしょっぱい」
- 「彼の採点は他の人よりも辛いことで有名です」→「彼の採点は他の人よりも厳しいことで有名 です」
このようになります。
「つらい」と「からい」の語源は?なぜ同じ漢字で書くの?
元々漢字というものは、中国から渡ってきたもの。
あなたも小学生の時、象形文字を習ったと思います。
動物や物などの見た目から漢字が作られた、というものですね。
この「辛」という字も象形文字です。
針のような痛々しい道具の様子からこの文字が作られました。
そこから「刺されて痛い、つらい」といった意味を持つ字になったのです。
確かによく見てみると「辛」という字が、なんだか痛々しそうな漢字に見えてきますよね。
「痛い=つらい」というのは、今も昔も変わらないという事です。
針のような、痛々しい道具を表した「辛」という漢字に、「つらい」という意味を当てたのが、「辛い(つらい)」の語源になります。
では、なぜ「苦痛」や「痛み」を表す「辛」が、味覚を表す「辛い(からい)」になるのでしょう?
昔の人は「辛」という字を「つらい」という風に解釈していました。
人間には味覚というものがあります。
人間の味覚は大きく分けて、次のような4つに分ける事ができるんです。
- 甘い
- 苦い
- すっぱい
- しょっぱい
そう、お気づきのように、人間の味覚には「辛い」というのが存在しないのです。
では一体、私達が感じている「辛い(からい)!」という感覚はなんなのでしょうか?
この謎の答えが、「辛い」の読み方が2つある理由に大きくつながるのです!
実は私達が感じる「辛い」という感覚、これは味覚ではなく痛み(痛覚)なのです。
厳密に言うと「辛味」は「味覚」に含まれていません。
「からい」ものを食べたとき
- 「喉が痛くなる」
- 「舌に刺さるようだ」
と表現するように、実は「辛味」は、痛さを表す「痛覚」になるんです。
カレーや唐辛子、わさびなどの辛い食べ物を食べると、舌がめちゃくちゃ痛くなりますよね。
この痛みを人間は「辛い!」と感じるようにできているのです。
つまり痛い=からいという事になるのですね。
ここで先ほどの話を思い出してみましょう。
人間は痛いと感じる事をつらいと感じる生き物です。
- からい=痛い=つらい
という図式ができあがるという訳なのです!
これが「辛い」につらいとからいの、2つの読み方がある理由なのです。
「つらい」と「からい」は、同じ漢字であり、同じ語源なのです。
「つらい」と「からい」の違いと見分け方は?
「つらい」と「からい」はどちらも、「痛み」を表す「辛」が由来になります。
「つらい」の場合は
- 苦しいときや困難な時の心身の痛み
を表し、
「からい」の場合は
- 「からい」ものを食べたときの喉や舌の感じる痛み
を表すという違いがあります。
見分ける場合は、前後の文章から判断するしかありません。
ただし、
- 「つらい」は非常用漢字
- 「からい」は常用漢字
なので、公的な文章の場合
- 「からい」は「辛い」で表記
- 「つらい」は「つらい」で表記
されます。
さいごに
以上、「つらい」「からい」の違いについて解説してきました。
辛いに読み方が2つあるのは、理由があったからなんですね。
1つの言葉に2つの別々の意味がある・・・
日本語が難しいと言われるのは、こういった部分があるからなんでしょうね。
確かに、激辛料理は食べるのが「つらい」です。
「からい」料理も「つらい」思いをせず、美味しく食べたいですね。